第23話 『一蓮托生』の裏話 その11 カイとリュウの話

 カイとリュウは『一蓮托生』執筆中に追加したキャラクターである。そもそもの発端は、このままではカクヨムコン長編の条件である10万字に届かなそうだと思ったからだ。

 映画『素晴らしき日曜日』の話でも触れたとおり、昭和22年当時でも「浮浪児」と呼ばれていた戦災孤児が靴磨き等をしながら上野の地下道を寝床にして暮らしていた。

 もしかつらが保護者として横澤よこざわ家を守り抜いていなかったら、康史郎こうしろうも彼らと同じような身の上になっていたかもしれない。戦後の厳しい一面を別視点で語るために、八馬の手下として戦災孤児を登場させることにした。


 カイが兄、リュウが妹だが、リュウはカイの服を着て男の子のふりをしているというのは追加で設定した。ヒロインのかつらの他に登場する女性が少ないと思ったからだ。

 最初は康史郎のクラスメイトの女子を出そうと思ったがうまい展開を思いつかず、戦災孤児の兄妹を出すことにした。カイはともかく、妹はあだ名呼びでも男の子か女の子か分からないようにしたいと思い、色々考えているうちに『令和2年、それぞれの秋』で設定した康史郎の妻、高橋たかはし柳子りゅうこを使おうと思いついた。

 『令和2年、それぞれの秋』時点ではキャバレーでボーイとして働く康史郎とダンサーとして働いていた柳子が出逢い、結婚したことになっていた。柳子の兄の設定はなかったので、妹に合わせて樹木にちなんだ名前にしようと考えたが、「高橋」というよくある姓にしたので、ネットで調べて被らない名前にするのは大変だった。「海桐かいどう」は「海棠」という表記がメジャーだが、あえてひねって被らないようにした。


 『一蓮托生』本編ではカイと康史郎、かつらとリュウという兄と弟、姉と妹のふれあいを「弟として、兄として」「姉として、妹として」の章で対比して描くことが出来たのも良かった。


 また、現在に続く要素としてカイが浅草橋あさくさばしに服飾品の卸問屋『ファッション・カイドウ』を開店し、『令和4年、おじいさんの贈り物』では4階建てのビル店舗になっているというのも、『一蓮托生』最終回で「問屋とのつながりが出来たら独立して仕入れ専業になりたいと語っていた」と伏線を張ったのが生きている。カイの『ファッション・カイドウ』開店への道もどこかで書きたいと考えているが、その際には康史郎と柳子のキャバレーでの日々と絡めて語れればと思っている。

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