第50話 目覚めたのは?

 やっぱり無理だー!!!


 いくら阿難陀であっても、一国の主であってもやっぱり無理!!

 俺、男とは寝れない。

 眠っていたはずの俺の魂が突如目覚めたのだった。


 そうさっきまではオーロラの魂が目覚めていた。はずだったのに、なぜかあの場面で俺とバトンタッチ。


 そんな事とはつゆ知らず、さっきまでのいい雰囲気から突然の拒絶に王子は困惑していた。


「オーロラよ・・・」


 王子も負けずと渾身の力で俺の手を払いのけ、再度俺と体を重ねようとした。

 先ほどの無礼は、うぶな娘の照れだろうと思い込むように。

 が、次は王子の接触を肘でガードした。


 ギリギリギリギリ・・・。


 近づこうとする王子の顔と俺の肘の攻防戦。


「リース王子。申し訳ございません。私無理です」

「無理とは?」


 ギリギリギリ。


「その・・・ふしどを共にするのが」

 

一呼吸置いて、王子の力がスッと抜ける。


「そうか、申し訳なかった」


 王子は俺を気遣うように優しい声を出す。

 すまぬ、リース王子よ。

 やっぱり無理だったのだ。身体は乙女、中身は男なのだ。

 男に抱かれるのはダメだ。


「そうだな。緊張しているよな。ことを急ぎすぎたな」

「申し訳ございません」

「謝るな。まずはお茶を持って来させよう。酒でも良い。心を落ち着かせたら気持ちも変わるだろう」


 ニコニコと提案するが伝えわってない。


「違うんです王子」

「ん?」

「この行為が無理なんです!!」


 王子がポカンとする。何が起こったのかわからように。手に持っていた団子を落とした子供みたいに。

 すぐに王子は何か思いついたようにぱぁーとにこやかになる。


「そうかわかった。すまなかった。今日一日ゆっくる休むといい。何今日がダメなら明日でも良い。ん?それも早いなら来週でもいいぞ」

「リース王子、あの」


 上機嫌な王子はさらりと俺の手を取り、肌を寄せる。

 お天気王子、曇りのち晴れ!


「いたたたたーー!!」


 ゴキっ!!


 やっちまった。

 抱き寄せキスをしようとしてきた王子の手をマルタ同様、後ろ手に捻り上げてしまった。

 慌てて離すが時既に遅し。


「オーロラ私に一体何を・・・」

「申し訳ございません。ついっ」


 ベットの上で何度も土下座する。

 王子の顔はみるみる怒りの表情に変わる。天気の急変。雨から雷雨。


「どういうことだ?私を弄んだのか?!」


 明らかに戸惑っているのがわかる。

 うん、そうだよね。わかるよ。わかる。

 俺だってびっくりすると思う。

 まさか、一人の人間の人格が入れ替わっているなんて思いもしないよな。

 これを伝えられたら楽だろうが、まず信じてはもらえないだろう。

 痛むのか、腕をさすっている。ゴキって変な音しちゃったし。


「王子本当に申し訳ございません。お怪我は」

「ええい、触れるな!!」


 癇癪を起こした子供みたいに甲高い声で吠える。


「オーロラよ。お主はやはり聖女ではない。聖女失格だ!!!」


 雷が落ちた。

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