第7話 爆乳お嬢様と使用人の過去

 お嬢様と俺はいつもの日常を後輩に見せるべく、なるべくいつも通りの過ごし方を再現していくことにした。




 ──まずはお嬢様のティータイム。


「先輩、なぜお嬢様の椅子の後ろに立っておっぱいを持ち上げてるんです……?」

「乳の重みによるストレスでお嬢様の味覚が鈍るからだ」

「一流ブランドの素材で作られたマドレーヌ、美味ですわぁ~!」




 ──次にお嬢様のエクササイズ。


「なぜ先輩まで運動をしてるんですっ⁉ しかもおっぱいを持ちながら!」

「う、動きをお嬢様とシンクロさせることでっ、乳と自分を一体化させっ、お嬢様に必要以上の負荷をかけないためだっ」ハァハァ

「ワンツー、ワンツーですわっ!」ハァハァ




 ──汗を流すためお嬢様のお風呂タイム。


「もはや素っ裸じゃないですか!!!!!」

「大丈夫だ、俺にはお嬢様の乳しか目に入ってない」

「おっぱいが丸見えな時点で大問題だという認識はっ⁉」

「無いね。俺は『乳持ち係』として、その程度で劣情を抱かない」キリッ!

「使用人~、今日は四ツ谷サイダーの用意はありますのぉ~?」ワクワク




 そして最後に、お嬢様の自室にて。お風呂上りのお嬢様のマッサージタイムだ。


「んっ! あぁっ……そこっ! そこですのよ、イイですわぁ~~~」


 もみもみと、俺はベッドの上でお嬢様の爆乳のりをほぐす。その隣では、開いた口が塞がっていない後輩が立ち尽くしていた。


「もう……じゃないですか……」

「えっ?」

「もうこれは! ただの恋人同士のイチャイチャじゃないですかッ!!!」


 後輩は叫んだ。


「もうシンプルに乳繰ちちくり合ってるだけですよねっ? だいたい何が『乳持ち係』ですか。どこの世界におっぱいを揉んでお金がもらえる仕事がっ⁉ あるとしても、もうそれはただの『ヒモ』です!!!」


 後輩はとんでもないことを言う。……それじゃまるで、お嬢様がただ単純に金で俺を縛り付けてるみたいじゃないか。失礼な。


 言い返そうとする俺を、しかしお嬢様がさえぎった。


「後輩さん?」

「な、なんですかっ?」

「貴女、肩が凝っていらっしゃいますわね?」

「……はい?」


 突然の質問に、後輩は面食らっている。


「動きがぎこちないですわよ。私もよく肩が凝る体質ですからすぐに分かりますわ」

「だ、だったら何なんです?」

「体験してごらんなさい、使用人の『乳マッサージ』を」


 お嬢様はそう言うやいなや、後輩のスーツのジャケットをスルリと脱がす。


「ちょっ、や、やめてください!」

「百聞は一見にかず、されど一験いっけんに勝るものはあらず。1つの体験は世界の見え方を変えるものですわ」

「だからって、私、おっぱいを男の人に触られたことなんて無いのに……」

「別にシャツの上からだって大丈夫ですわよ?」

「でも、先輩にだなんて……」

「嫌なら強要はしませんが」

「そ、そんなことは! でも、先輩が、その……嫌なんじゃ」


 後輩が不安げなまなざしでこちらを見る。俺は首を横に振った。


「俺はぜんぜん大丈夫だけど?」

「っ!」


 後輩は顔を真っ赤にして、


「な、なら、お願いします……。ふ、服の上からですよっ!」


 そう言って、ワイシャツ越しに胸を俺の方へと突き出してきた。


 ……うーん、小さいな。普段揉んでいるお嬢様のモノとは段違いだ。


「先輩? 何か失礼なこと考えてません?」

「いや、そんなことは」


 俺は深呼吸して誤魔化して、意識を正面の乳へと集中させる。そうだ、小さかろうが貧しかろうが、目の前にあるのは乳に違いないのだ。ならばやることは普段と変わらない。


「ハァッ──!」


 俺は気合いの声とともに後輩の乳を揉みしだく。


「んッ! あぁッ!」


 後輩が思わずといった様子で声を漏らす。


「これッ……すごいぃぃぃッ!」

「フンヌっフンヌっ」モミモミッ

「えっ、うそっ……! あんなに辛かった肩が、羽のように……!」


 後輩の顔色がみるみる内に血色よくなっていく。


「ミッション、コンプリート……!」


 俺が最後の決め技として乳ドリルを行なう時には、後輩は高級エステ帰りのOLみたいに顔をホクホクさせていた。


「こ、これが……『乳持ち』……」

「良い顔をしておりますわよ、後輩さん」

「えっ! ま、まあ、確かに気持ち良かったですから……」


 後輩の反応に、お嬢様は大層お喜びな様子でオーホッホッホ! と高笑いをしていた。


「そうでしょう! 私の使用人は天才乳持ち係なのですわ!」

「その職業名については未だに疑問が残りますが……はい。私、認めます。先輩のやっていることは、確かにひとつの立派な仕事に相応しいもので……先輩にとっての天職なんだ、って」


 後輩はどうやら俺の職業についてちゃんと理解してくれたらしい。これまでの非礼の数々をお嬢様と俺とへびてくる。


「ぜんぜん構いませんわよ。ところで後輩さん? 私、この使用人の前の会社での仕事ぶりは聞いたことがありませんでしたの。お聞かせ願います?」

「ええ、もちろん。いくらでも!」


 お嬢様と後輩はすっかり打ち解けて、何やら女子会を始めてしまった。


「俺はあまり聞かない方がいいかな?」


 とりあえずお嬢様たちの飲み物でも取ってこようと部屋を後にした。


「ところで先ほど後輩さんが玄関で仰っていたことですが」

「はい? なんでしたっけ?」

「使用人が会社で『おとしいれられた』とかなんとか……あれは何のことですの?」

「ああっ! そうなんです! 聞いてください、酷いんですよ! ウチの営業部の上司が専務たちと結託して、先輩を……!」


 かくかくしかじか、と話す後輩の話を聞き、お嬢様は。


「なんですって……?」


 誰にも悟られないような静かさで、その胸の内に炎をたぎらせた。

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