16.三年生。1回戦。

 三年の引退試合になった。スタメンは一華、ナノ、有佐、唯、麻帆だ。それに腕を見込まれた奏歩が補欠。ろくに練習していない三年はタバコも吸っていて体力の低下が目立つ。


 奏歩は三年のガード、ナノをしのぐ実力があったがそこは上級生のメンツを立てていたのが村上先生だった。


 だが地区大会の予選で運悪く村上先生は二回戦に強豪校の私立山本学園とあたるくじを引いてしまった。初戦は弱小チームとうわさされる小浦中学だがこれでは三回戦に進めるか不安だった。


 三年たちは勝ち負けじゃないよ、楽しもうと、気にしていない。しかし負けず嫌いの奏歩はどうしても勝ち進みたいと思っていた。最後の練習に気合いが入る。試合前は体調を整えるため軽い練習メニューなのが一般的だが奏歩は1キロを4分で走りきった。


 応援は声を出すようにと、一年に指示がとぶ。とうとう予選が始まった。小浦中学は素人の寄せ集め。あっという間に10点差が開いた。三年たちは余裕の表情。小浦中学のディフェンスが弱く何度も速攻で得点を重ねた。


 ゲーム終盤になり30点差が開いたところで村上先生は一年と総員交代の指示を出した。緊張する信子、凛、雄。奏歩はそうでもないようだ。麻帆には若干疲れがみえた。憧れのカッコいいユニフォームをきてコートに立つ面々。勝負はついていたが初めての公式戦。できるだけいいところを見せたい。皆は思っていた。とくに凛はシュートに得点に絡みたいと思っていた。凛の母親と姉が応援にきていたのだ。


 相手チームのガードはボール運びが下手でオールコートディフェンスでとの指示がでた。凛は走った。奏歩がいとも簡単にボールを奪う。雄にパス。雄は相手フォワードをドリブルでぬいてレイアップシュート。決まった。


 これが一年生最初の得点だった。敵のシューターはやたらスリーポイントを狙ってくる。しかし外れる。ロングシュートだからバウンドが大きくボールの落ちる場所がゴール下ではなかった。信子はリバウンドをとれずにいた。


 凛はそんな信子にアドバイスをした。右からスリーを打ったらだいたいが左に外れる。左からうったら右へとボールが落ちる。だからゴール下を離れて少し遠目の場所に待機しておけばいい。信子は言われた通りやってみた。信子のリバウンド率が上がった。


 凛は状況判断が得意だ。一年の活躍ができて試合は78対50で終わりを迎えた。三年たちはハイタッチして喜んでいる。しかし本番はこの後なのだ。奏歩は出番がくると踏んで気合いを入れ直した。信子は緊張覚めらやずトイレに何度も駆け込んだ。

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