第29話
「カナンさん、いけないね。勝手にメッセージをながしちゃ。みんなが混乱してしまうよ。」
クオクは涼しい笑顔でそういった。まるで彼の周りには何事も起こっていないようだ。そして彼はガススイッチが並んでいるちかくで、なにかの番号を打ち込んで、ガス室のカバーを開けた。
「一足遅かったよ。もう誰もいない部屋にガスを流してもね。彼らはもう出ていってしまったし。いつのまにあれを船に変えたんだろう。でもどこに行っても同じ。同じことの繰り返し、また彼らの中で強いものが弱いものを支配するようになる。ずーっと同じことを繰り返しているだけだよ、人類なんて。」
クオクが何か操作して、屋上が映るモニターを出した。そこには茫然と海を眺めるSt1の人々が映っていた。私のアナウンスを聞いてざわついているようだが、誰も動こうとしない。
「クオク、お願い!みんなに伝えて!噂は嘘だって、反乱分子をあぶりだすためのデマだったって!」
クオクは急にモニターを見ながら高笑いした。
「ヤマグチは本当にこのことを予言したんだ。予言は本当だよ。その予言を彼らが勝手に解釈したのさ。彼らは選ばれた人々だからね。愚かなやつらが、天に召されるはずだから、あのボートにのると一緒に連れていかれると、本気で思ってるんじゃないかな。自分たちだけはこのままこうしていれば、地上に降りられるとね。かわいそうな人たちだよ。」
「じゃあ予言が本当と知っていたなら、ねぇクオク、何か準備はしていたんでしょう?この時のために自分達だけは助かるために?」
クオクはそれを聞いてクスクス笑った。
「準備?神であるヤマグチが準備してこの世界だよ。僕は次に一体どんな準備をすればいいんだい?」
私は窓からあの柱を見た。また大きくなっている。自分たちが柱に引き寄せられているのだ。
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