第14話 仕事終わりのおいしい一杯

 私とエリ姉と番組スタッフたちは、カルミンテンのギルドマスターに薦められた酒場に来ている。ミレミランさんとドリンモークさんを呼んで打ち上げ中だった。

「皆さん、遠慮せずにいっぱい食べて飲んでね」

「たくさん頂くにゃ」

 ミレミランさんは何度も来ているみたいで、メニューを見ずに頼んでいた。


 テーブル上には大盛りの肉料理が目を引いた。この街の郷土料理みたい。元の世界にあった肉団子に似ていて、味付けは異なったけれど美味しかった。

 楽しい時間が過ぎた。ミレミランさんとドリンモークさんは、私たちと打ち解けていた。番組スタッフたちとも気軽に話し合っている。


「マイナは何を飲みますか」

「さっぱりした飲み物がほしい」

 大雑把な言い方だけれど、これだけで横にいるエリ姉には伝わる。

 好みの飲み物が届くと一口飲んだ。果実の香りがたまらなくて美味しかった。


「今日はいつもよりも機嫌がよさそうです。楽しい出来事でもあったのですか」

 エリ姉が聞いてきた。

「宝石アイテムの売り上げが順調だからね」

「本当は?」

 エリ姉にはお見通しみたい。


「宝石アイテムが役に立って嬉しい。魔物たちからハンターたちを守ってくれた」

「素直なマイナは愛おしいです。お姉さんからご褒美です」

 珍しく人前で頭を撫でてくれた。通販番組ではネタで使っているけれど、滅多に人前では頭を撫でない。私が恥ずかしがるのを知っているからだった。

 幸せな気持ちになって、打ち上げだからか人前でも気にならない。自分でも顔がにやけたのが分かった。


「初めて生で見たにゃ。うちにも運が巡って来たにゃ」

 ミレミランさんが私を見て拝みだした。

「ミレミランさん、如何したの? 私は神でも何でもないよ」

「ハンターたちの間には一つの伝説があるにゃ。マイナさんが頭を撫でられる姿を見ると幸運が訪れるにゃ」


「俺も聞いているぞ」

 ドリンモークさんも話題に入ってきた。相当お酒を飲んでいるみたいだけれど、酔っている雰囲気はなかった。

「お姉さんは毎回幸運を頂いています」

 エリ姉の手が頭から離れた。


「俺はすでに幸運をもらっている。ダイヤモンドのブローチだ。何度も危ない場面があったが切り抜けられた」

「伝説は別にしてドリンモークさんが無事でよかった」

「宝石アイテムを使ったハンターたちも喜んでいたにゃ。凄い効果だったにゃ」


「私はエリ姉と宝石を語れて、ハンターさんたちは宝石アイテムを喜んでくれる。通販番組は楽しいお仕事で、私には合っているみたい」

「お姉さんもマイナの笑顔が見られて嬉しいです」

 夜遅くまで打ち上げは続いた。


(了)

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お仕事は通販番組MC ~異世界でも宝石アイテム紹介は楽しい~ 色石ひかる @play_of_color

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