第7話 幼少期 最終

皆さんには脳裏にこびりついて離れない

他人の顔はありますか?

目が合った一瞬を撮影した写真のように、

脳に焼き付かれる感覚を。


夏休み、家族でプールに行った。

スライダーはもちもん色んな種類のエリアがあり毎年人気のプールである。


母はプールサイドで日に当たりながら

キラキラ光る水面を眺めるのが好きな人。

だから水に入るのは父と兄と私の3人。


流れるプールでゴーグルをつけた兄が潜って底にタッチ出来ることを父に自慢していた。

私は足がつかないので浮き輪で浮かぶ他ない。

幼稚園指定の制服はいちばん小さいサイズでもブカブカだった私は靴だけはどうしようもないということで自前だった。

他の同じ年頃の子達は足がついていたのかも。

私は流されるままにプカプカと浮かぶ。


視界に届く程度の先で遊ぶ2人を見ていたら

振り向きざまにこちらを見てきた1人の男。

プール内は混雑していたので、誰かを探しているのかな?と思っているうちに追い越して行った。あの人、1人で来てるのかな?そう感じた。


父と兄は楽しそうにはしゃいでいる。

追い抜きざまに同じ男が見てくる。

間違いない、1人で流れるプールにいる。

そしてまた混雑に紛れて居なくなる。


ぞわ~


触られたのはほんの一瞬で、ほんの一部分。

それにもかかわらず全身が震えるほどの嫌悪感が襲ってきた。


男は口元だけ笑い後ろ向きに流れながら

私の顔を見て、混雑に紛れていく。


「おやつ食べてくる」父に伝えプールを出る。

「あれ?もういいの?」聞いてくる母。

「うん、もういい」答える私。


天然パーマのような癖毛に、眼鏡。

輪郭は丸い。

目は一重で細く、少しつり気味。

鼻先は丸く決して高くはない。

中年の中肉中背。

不気味な笑顔。


これが私の脳に焼き付いた1枚目の写真だ。

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