第5話 自己紹介

 七人で囲むにはやや狭い円卓で顔を突き合わせとりあえず自己紹介を始めることとした。


「オレはレオ。知ってのとおりアオハルのリーダーさ」


 おい、そんなのいつ決めた! とニールが茶々を入れたが流して続ける。


「えーと……使う武器と戦闘経験を教えてくれ」


 僕は頭の中で組み立てていた育成計画に則って、連中の能力を把握しにかかる。


「剣! 実戦はないけれどニールやクイントに稽古つけてもらったから戦えると思うよ」

「へー、何年くらい?」

「5…………日くらい?」


 素人……っと。どこから自信を得たのか。


「クイント。弓使いだ。狩りの経験は豊富だよ。得意な獲物は人間のメスだ」


 きらりと白い歯を見せるな、白い歯を。


「って、そこは笑ってくれよ! 冷たい目で見られるとバカみたいじゃないか!」


 みたいじゃなくてバカだよ。


「はい、つぎー」

「無視かよっ!」


 他の連中が大笑いした。

 本当賑やかなこと。



「ニール。ナイフ使い。ケンカで負けたことはねえ」


 よくお似合いで……たしかに身体も引き締まってるし強そうな雰囲気だ。

 まあ、あくまで人間相手の話だけど。


「モンスターと戦った経験は?」

「あ? 無かったら悪いか?」


 凄んでくるニールの迫力がすごい。

 やっぱコイツ苦手だよ。



「オラはドンだ! 武器は棍棒! 村に来たモンスターはこれで追い払っていたゾ!」


 僕の倍くらいある巨体から繰り出すパワーはそれだけですごいものだろう。


「なー、どうせだからメシ食いながら話そう。オラ、お腹すいちゃったゾ」


 昨日、あんだけ食ってたのに。

 燃費の悪さは欠点だぞ。


「アリサだよ。武器は一応杖持ってるけど、そっちはあんまり期待しないで。治癒魔術使えるから回復役ってことで」


 ヒーラーか! 冒険者界隈では治癒魔術の使い手は重宝される。


「どうやって治癒魔術を習った?」

「前の夫が治癒術師だったから遊び半分で教えてくれたの」

「へー、オット……………………夫⁉︎」

「ふふーん、じつはバツイチなのでーす。人妻の色気溢れてるでしょ?」


 ヒーラーと知った時の五倍は驚いた……どうみても僕と同じくらいでしょ、君。



「グラニア。とりあえず槍使いってことで」

「とりあえず?」

「安かったから使ってるだけってこと」


 気怠げにため息をつく様は冒険者というよりも有閑階級の貴婦人と言われた方が納得いく容貌と仕草だ。


「とりあえず、全員の経験は聞かせてもらった。多少の差はあっても未経験者と言うことだから、しばらくは鍛錬を————」

「ちょっと待った! アーウィンさんの紹介がまだでしょう!」


 と、レオが挙手しながら僕に詰め寄ってきた。


「僕のことはヒッチさんから聞いているだろ」

「ふーん、昨日の晩は呼び捨てしてたのにここではヒッチさんなんだな。心の中でもヒッチ、って読んでたりして」


 クイントはニヤニヤしながらそう言って僕の羞恥心を刺激する。

 さらにニールが舌打ちしながら急かす。


「ゴタゴタ言わずにさっさと話せよ。テメエのしみったれた愚痴は昨日、散々聞いてやったんだ。何ができるか、何を教えてくれんのか、聞かせろよ」


 教わる側とは思えない態度だがごもっともなことだ……ていうか、昨日いったいなにをコイツらに話したんだろうか。


「じゃあ……僕は、アーウィン・キャデラック。魔術師で————」


 観念して話そうとしたその瞬間だった。


「お願いしますだぁ‼︎ ウチの孫娘を助けてくだせえ‼︎」


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