第17話 なんか大事に発展してるのだが…1/2【アリシア視点】

「アリシアさーん、グラウンドの方でなんかすごいことになってるらしいよ?一緒に見に行かない?」


昼休みが始まってすぐ、昼食のクリームパンを食べ始めようとしたところでユーリさんが私に話しかけてきた。

正直、あまり興味はなかったけどロワもいつの間にか姿が消えていたため、私は今朝の出来事を思い返す。


『ロワくん!今日の昼にグラウンドにねー!』


フェリ会長の言葉がやけに鮮明に映し出された。私は少しだけ食べた食べかけのクリームパンを袋に仕舞って、ユーリさんと一緒にそのグラウンドが見える場所に向かった。


「なにも、生徒会長が一人だけ。誰かを待ってるような感じだったよ!」


「そう、なんだ…」


完全に合点が入った。きっとフェリ会長はロワのことを待っている。

そして、私たちがグラウンドが見える窓に着いたところで、私は自作の拡大と縮小が思い通りにできるスコープで会長を見る。


(えっと…魔力量は放出状態で、剣が一つ…)


だいたい、なにをするのか想定はついた。でも、ロワは普段学校に剣を持ってこないはず…

スコープを仕舞おうとした瞬間、隣にいたユーリさんが声を上げた。


「見てみて!あれ!誰!?」


もう一度スコープで見ると、ロワが冒険者のときに使う本気の装備を持ってきていた。もちろん、服は制服だけど。


「誰だろうねー?私は会ったことない人だと思う。しかも後ろ姿だからよくわからないし…」


「そっかぁ。そのスコープって、アリシアさんが自作で作ったものだっけ?私たちには使えない、よね…」


「そうだねー、私の魔力の波長に合わせちゃってるから」


私はあえて知らないふりをした。近くにも数人の生徒がいたから絶対、もっと人が集まる。


そしたら、もしロワの名前が上がった場合、ロワは一躍有名人だ。

私もまた質問攻めにされるだろうし、ロワにも不都合がたくさん起きるだろう。


(ここでは絶対に知らないふり!演じきるのよ…私)


心の中でつぶやいて、自分を励ます。実際、私はあまり嘘をつくのが得意ではない。ポーカーフェイスなんてもってのほか、むしろそのせいで昔、苦しい思いをしてきた。


(がんばれー!ここはあの人たちみたいな勘が鋭すぎる人はいないから!大丈夫!)


「ねえねえ、なんか二人とも戦い始めたよ?どういうこと?」


「さ、さぁ…」


私は心臓の音を抑えるのに全神経を集中させていた。そのせいで、今なにが起きているのか全くわからない。


「いいなぁー。私にもスコープがあったらなぁ」


ユーリさんが羨望の眼差しを私に向ける。同時に、私は完全にスコープを仕舞う。


「え?スコープ、使わないの?」


「うん。自分だけみんなと違うってのがちょっと嫌で…」


依然、ロワとフェリ会長の戦いが繰り広げられている。


皆がそれに釘付けになっている。

そんな中だけアリシアだけ目を閉じ、久しぶりに想起させたくない記憶を再び奥底に封印しようとする。


「アリシアさん、なんで目閉じてるの?」


「あ、ごめん…ちょっと目にゴミが入ったみたいで…」


あぁ。まただ。最近は転校する楽しみとか、冒険者としてモンスター倒したりとかいろいろ勉強したりとかで充実した日々を過ごせていたけど、やっぱり忘れられないものは忘れられない。


私はなんとかあの忌々しい記憶を抑え込む。まだ小さい頃のはずの記憶がこんなにも鮮明に残ってるなんて。


「ねえ、すごいよ!あの人!会長さんと互角だよ!」


「う、うん…」


今はフェリ会長とロワの戦いーー遊び?を見届けるんだ。昔の記憶なんて、今を楽しんでいれば自然と消える。


私はもう一度スコープ取り出し、2人を見た。

互いに一歩も引いていない。ロワもなぜか本気で応戦している。


(本気でやっちゃっていいのー!?後始末やばいことにならない!?)


一応、アリシアとロワは自分たちが冒険者でもあることを伏せている。

なぜなら、普通の冒険者ならいいものの、自分達は普通ではないからだ。


(えっ!?吐血した?会長、そんなに本気なの?ロワは流石に100%の全力を出してるわけでもないはず…)


その後、ロワが作った魔力の斬撃による包囲網が消えると、二人は校舎に向かって歩き出した。


(もうっ!なんなのよ!急に始まって急に終わるとか…!)


「終わったねー。教室に帰ろ。私まだ食べかけのクリームパンあるし」


「そうだねー、結局なんだったんだろ。アリシアさん最近よく4階の方行ってるよね?何か知らない?」


「私はあんまり、内部事情はわからないなー、そもそもお手伝いしてるだけで生徒会役員ではないし」


「そっかぁー」


私たちは帰ろうと後ろを向くと、そこにはたくさんの人がいた。1年生、2年生、ましてや3年生まで数名見受けられた。

なんとかその人混みをかき分け、私たちは人混みの外に出ることができた。


「人の集まり具合、すごいねー」


「そうね。いつからこんなに集まったんだろう」


(そりゃあ、途中でも中断するか。こんなに人が集まれば。しかも、ここ2階だから1階と3階もあるとしたらほぼ全校の生徒集まってるのでは?)


私はとりあえず、後でロワを問い詰めることを決意した。


「あ」


「ど、どう、も?」


クリシャさんとバッタリ出会った。数秒立ち止まったけど、気まずかったため、私は再び歩き出した。


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どうも。自分今まで主人公視点でしか物語を書いたことがないからヒロインとか別キャラの視点をどうすればいいのか意外とわからないものですね…

いっそのことこの部分と次も全部書き直してやろうと思ったのですが時間に余裕がないもので…

というわけで、そろそろ恒例となりそうな!

小説のフォロー、★をつけてくれると作者のモチベーションが上がるかも!?

よろしくお願いします。応援もありがとうございます!

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