第16話 一騎打ち、強制終了

「んぐっ…!」


「…」


腹から体中に激痛が走る。反射的に剣を落とし、自分の腹を手で抑えてしまった。

幸い、昼食を食べていないためダメージも少ない。逆流も起きなかった。


でも、食べていたら間違いなくグラウンドに飲み込んだはずの昼食が最悪の形で登場していただろう。


会長の方も無言で立っているが、俺の入れた数回の斬撃の傷が制服に入っている。ましてや、足の方からは血がゆっくり流れているのが見えた。


(お互い、かすり傷といったところか…)


さすがに学校、しかも後ろにたくさんのギャラリーがいる中で冒険者として活動する時くらいの力を出すわけにはいかない。そもそも、魔力がすっからかんだ。


「どうします?続けますか?」


俺は落とした剣を持ち上げ、再び戦闘体制に入る。会長も魔力消費は少なくないはずだ。このまま続けると、俺がだんだん有利になる。


「やめにしようか。僕もこんなに人が集まるとは思ってもいなかったし」


「まさか、告知したんですか?だとしたら聞いてないんですけど…」


「いいや、みんなにはなにも言っていないよ。でも、誰かが僕らを見つけるとすぐに拡散されてしまうだろう?僕もそれは想定していたけど、流石にこれほど集まるとは思っていなかった」


「それだけみんな会長が好きってことじゃないですか?」


冗談半分、静まった校舎にまで届きはしないが、グラウンド中に響く大きな声で言った。

すると、会長も俺の冗談に乗ってくれた。


「そうみたいだねー。いやぁー、これだからなぁー」


治癒魔法で傷を完治させた会長が立ち上がる。

少しだけ間ができたが、お互い険しい表情から一転。

顔に笑みを浮かべる。


俺と会長は同時に剣を鞘に収め、互いに歩み寄る。

このとき、会長は校舎に戻ると思っていたのだが、世間のマナーまでご存知だったのは驚いた。


大抵、世間では1対1の勝負が終わった後の「対戦ありがとうございました」とは言わず握手を交わしあったり、対戦者が魔力の衝撃波をぶつけたりして、盛り上げるという風習がある。


俺たちは二人とも魔力がほぼ残っていなかったため、固い握手を交わした。


「さあ、戻ろうか」


「俺は保健室ですけどね」


「あっ!忘れてたね。まあ、大丈夫だろう。吐血しなかったし。吐血してもいいくらいの打撃を入れたつもりだったけど…さすがだね」


「学校内で吐血とか、物騒なことさせようとしないでくださいよ…」


俺は苦笑して、改めて腹を撫でてみた。触れば、痛みが残っているが触らなければなんともない。


「また、後でね」


「後で、なんでこんなことさせたのかたっぷり聞かせてもらいますからね」


「はいはい。ちゃんと意味はあるから」


「逆になかったら今でもすぐに会長にパンチの一発でもしてやりたいところですね」


俺は満面の笑みを故意に会長に見せつけながら、目だけまったく笑っていないような素振りを見せた。


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タイトルでこれは先生が出てきて強制終了するやつだと思った方、すいませんでした。ん?なんで私は謝ってるんだ?


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