第3話 葵祭の後日談1
葵祭の当日、私は家でのんびりと過ごした。あんなに混む場所に行くのはごめんだ。
数日後、呼んでもいないのに兄が来るという連絡が来た。車争いの件かな。今回は気が見たものの衝撃が強かったし、その後の結末も結末だから、流しておきたかったのに・・・
重い腰を上げて女房たちに用意させる。しばらくして兄が訪れた。
「いかがされましたの?」
「君は、御禊の日に行列を見に行ったかい?」
「ええ行きましたわ。」
沈黙だ。無言で下を向き扇をもてあそんでいる。言いにくいのかな。言いにくいだろうな。正妻と愛人が争いましたなんて。
「北の方と六条の御方とのお話でしょうか?」
「知っていたのか?」
「ええ。少し距離はございましたが見えておりました。おにいさまはどうお思いに?」
「六条の方には大変気の毒なことをしたと思っているよ。」
そうですね。気付かず通り過ぎましたものね。
「それで?」
「北の方は、重々しい方だが、やはり情に欠けるなと。無愛想だし、本人がそうしようと思っていないことはわかるんだよ。」
うん。特に人を貶めよとかもしないと思うよ。
「そうですわね。そんな軽薄なことをされるような方でもございませんでしょう。」
「ああ。だが、妻と妾の関係はもっと情愛を持って接する関係だと思うんだ。妻はそうではないらしい。だから、その影響を受けて考えのない者どもが勝手にしたことだと思うんだ。」
「わたくしは北の方と同意見ですわ。別に情愛を持って接する必要はございませんでしょう。それはおにいさまの理想です。」
兄は黙った。あんまり反対意見を言われることなんてないもんね。そしてこの理想を紫の上に押し付けていくんだな。
「・・・そうか。そうだよね。ただ、六条の方にはとても嫌な気持ちをさせてしまったと思うよ。あの方はこちらが恥ずかしくなるほど誇り高い方なのだ。」
じゃあ、なんで大切にしないのかな。六条御息所のそもそものお悩みはあなたのせいですよ。
「それで、おにいさまは何かされましたの?」
「六条に訪ねて行ったのだが、斎宮のこともあり断られたよ。無理もないよね。もう少しお互いに仲良くできないものかね。」
「おにいさまがどちらにもご不満がでないようにお扱いになれば仲良くお出来になるのではなくって?お父様にも注意されましたよね?」
「うっ・・・」
この人は自分は悪くないんだよね。こればっかりは兄の味方にはなれない。もう少し女性を思いやってほしいものである。
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