好きになってくれた人のNTR現場を見て自分の気持ちに気付くまでは良い、解説は求めないでほしい

 今、俺は左右に二人の女の人を連れて、サラのデザイン事務所の前にいる。


 右には先程バイクから落下して頭から血を出していたガタイの良い宝塚の男役の様な中性的な顔つき、くノ一にしては身体のラインと筋肉が浮きすぎな全身タイツの女の人…タツさん。


 左には先程までハンドルに立ちこちらを向きながら「昭和のF1アニメには高度なAIを積んだ車がいたのよ」とか意味分からない事を言う、身長は俺と同じぐらいだけどスタイルが凄く良い変態、もとい騎士風の変身ヒロインのイクエさんがいる。

 

 着くまでに色々あった…出る直前まで勢いに押されていたヒロさんが最後に『ちょ、待てよ!?』と言った事。

 さっきからタツさんが『プロデューサーか社長か…どちらにせよ不肖の弟子に引導を渡すのが師の仕事…』と意味不明な事を言っている事。

 イクエさんが『イグッ♥エッ♥は私の鳴き声じゃない、人を何だと思っているの?』と何故か考えている事が分かり走りながら説教された事。

 

 そんな訳で事務所の前に着いたが…


「とりあえず藤原さんが行ってくれるかしら?この事務所…大聖堂の異能が3匹いるわ。ここ、日本進出の拠点の一つみたいね、結構重要な拠点だから調べがつくまで何もするなって言われてたのよね。でも藤原さんが勝手にやったって事にするから先に入って、私が後から怒られるの嫌だから、ネタキュンなら良いけど棺とか不知火の奴にガタガタ言われるの嫌だから」


「旧姓で呼ぶな、相変わらずのクソ諫言眼鏡…だがしかし!現場監督タツは臨機応変!どのような闘いにも千変万化で対応する!イクゾッ!!」


 タツさんはシュラっと何か出した…虹色の細長いコケシ?

 

 ズヌンっ!


 それをおもむろに…ケツに挿した…何故!?


「かあぉぁ!うぉう!?♥ヒロ…そして異世界のNTR卿達がオレを導く!頼もぉぉぉぉ!」


 ドォンッ!


 良い子の皆は真似しちゃ駄目だゾとか意味不明な事を言いながらコケシをケツに…入れ…ドアを蹴り破った。

 そしてタツさんとイクエさんがスタスタと暗闇の中に入ると同時に、凄まじい光と音、同時に車同士の衝突の様な激突音がしたかと思うと、また静かな暗闇に戻った。

 何をやったか全く分からないがうっすら見えるのは複数人が倒れているという事。


「大天使級が出てこないと話にならないわね…」


「大か小で表現するのは便だけで結構。クソ眼鏡軍団もそうだが異能というのは名前ばっかりで雑魚ばかりだな…大体、天使とか神とかは昔のRPGでは悪い奴と相場は決まっている。ヒロのチ○コのアカを煎じて飲むべき…オレが。さて、NTRは2階か…」


 さり気なく、信じられないぐらい汚い事を言うタツさんが2へ上がっていく…全力で不法侵入だ…


「オイ、タロァマン。オレはこれから弟子に人の生きる道という道徳的な引導を渡す。教科書は無い、道徳をこの拳に乗せてな!その間に自分のすべき事を考えると良い…」


 さっきからタツさんが言っている…弟子?何の話か分からないが道徳と暴力は正反対と思うが付いていくしかない。

 

 そこには…4、5人だろうか?明らかにおかしな臭いのする空間で暗闇の中から嬌声が聞こえた。

 

「太郎君、ドラッグでイカれたくなければ私の側を離れないで。でもこの中に大事な人がいるなら君がおかしくなっちゃうかもね…まぁこの人達は私達を認識出来ないだろうから辛くなって叫んでも平気だから…」


 イクエさんが近くに来た、虹色の何かを纏っているが始めてまともな事を言った気がする。


 その部屋にいる人影は俺達3人が入口に立っているのに、ドラッグの効果なのかイクエさんの力なのか、一瞥すらしない。


 そして聞こえる…俺に愛を囁いてくれた人の声が…聞こえる…一緒に歩こうと手を差し伸べてくれた人の声が…


「チュパァ…ポプラしゃん♥気持ちいいれしゅ♥頭がトぶ!♥デジャインがわくぅ♥あへぇぇ」


「そうら!シャら!おみぇえの芸術はエクスプロージョンだ!もっとエクスプロイドしろろろ!」


 活発そうな短髪の、20代後半ぐらいの髭を蓄えた男性が…僅か数メートルの距離で俺の可愛い後輩と激しく絡み合っていた。


 思えば心当たりはあった。自分の世界に入ると勇気を出して何でもやった。きっかけは俺だったり家族だったり…

 幼い頃のサラを思い出す…家はおろか心の殻から出なかった女の子。出会って…ある時から一歩踏み出せる子になっていた。それが何であろうとも…


 そして、この現実に心の準備が出来ていたかと言われれば、出来ていなかった…この姿を見たかったと言われれば、見たくなかった。

 それでもいつかは向き合う現実で…嘘をついていたのは明らかで…それは裏切りという行為で…


―――先輩!♥少しづつ、進んでいきましょうね!私の初めてを先輩で塗りまくりですよ!―――


「わだじにはいるぅ!♥きぼぢいいい!♥しゅご!♥しゅごいぃい♥これずきぃぃい!♥」


 答えなんか知らない方が良かった。知らないで逃げ続ければこんなものを見る必要なく、何もない平坦な生活で、平穏の中で生き続けられただろうか?

 でも………知った。知ってしまったんだ。


―――先輩!♥海、楽しかったですね!♥サベージ君の一周年記念なのに二人で楽しんで悪い事しちゃったかな?♥でも許してね?コレからもっと思い出が増える――から―――


「う…くぅ…うあ…うぅ…サラ……サラ……アァ」


 悲しいのかな?それとも同情かな…そんな事、俺に思う資格あるのかな?

 シアとサラ、選べるほどの感情も無くて、好きになるという気持ちがどんなものか分からなくて、少し涙が出て視界が歪む。

 それでも何もしなければ悪夢のような未来に辿り着く…なら…


 シアと離れて、一番思い出のある女のコ…サラ…

 悲しくて悔しくて…それでもこの気持ちはきっと…俺は好


「おい!アレ?シャーじゃないじゃん?何で?コイツ、海の時の奴じゃん…おいタロァ、説明してくれ…ここアイドル事務所じゃないの?」 


 シャーって何?海のって何で知ってる?

 変な汗を出しながら眉をハの字にしてはこちらを睨むタツさん…何いってんだこの人。


「状況を解説しろ、オレの…知ってるストーリーと違う。昔サッカーゲームで実況解説するゲームがあった。試合開始前の『こんにちは!マーキーデース!天気は晴れ!』という台詞はしっかり聞こえた、あんな感じの解説で。駄目なのは格ゲーで『タイガー』と言いながら技を出す奴は何を言ってるのか分からなかったから『きっとアイスブルーって言ってるぞ』ってオレが言ったら後日『タイガー』と発覚し、オレは何故か厨二病のレッテルを貼られ“顔面アイスブルーのタツ”とか言われ笑われた。皆分かってなかった筈なのに、それなのに…つまりそういう事か!?」


 どういう事か分からないが、辛く苦い顔をしながら涙を流す俺によくそんな話出来るな…


「そこの馬鹿はこの間のシアとかいう小娘と勘違いしてたみたいね、ほら見てみなさい…ぷるぷるとしてるわ(笑)千変万化とか言いながら、聞いた話だと横スクロールゲームしかした事ないのに、急に有名ゾンビゲームをやったから、ゲームの最初で犬が急に窓割って入った時にビックリし過ぎて腰抜かしたままヒロ宅の窓割って飛び出して、外で散歩中のレトリバーにまたビビって、また飛び退いたらそのままトラックに轢かれる様なメンタルよ、つまり一直線のみ。ウケる!」


「きぼぢいい!♥せぇんぴゃい!♥こりぇキモチイイイィィィ♥」


「シャカカ!エクスプ!エクスプロォオオォォジョンジョンジョン!」


 頭がパンクする。情報量が多過ぎるし涙が止まった。

 俺は悩んだ様な困ったような顔をしながらおっさんとサラの痴態を見ている。


「タロァ…どうした?…解説を…どうすれば…」


 俺は動いていない頭のまま、ありのままの現状を伝えた。


「アレは…シアの妹のサラで…最近仲良くなって俺の事好きって言ってくれるけど…眼の前でおっさんとセッ○スしてます」


「太郎君、どうするの?悔しい!でも感じちゃうの?シコシコシコって?」


 どうって…どうするって?そんな性癖ないけど…


「オレ、ざまぁとか昔から良く分かんないけどさ…とりあえず強く殴れば?この女も…おっさんも…」


 はい?殴るの?俺が?


「いや、殴るのは…殴るってこの状況の人達を?え?タツさん?」


「このまんまデジャインしゆりゅう♥降りてくりゅッ『パンッ』グェッ」


「エクスエクスプロプロプロージ『パンッ』ぶろぁッ」


 俺が唖然としているとタツさんが頭をかいた後、急に乱交状態の人達の頭を叩き始めた…グッタリするサラやおっさん…


「なんかムカついたからとりあえず気絶する速度でひっぱたいた…」


「何よ、全然ざまぁじゃないじゃない…この脳筋は…だったら私は一定時間経つと太郎君が眼の前で姉とやってたり罵倒される幻覚見えるようにしてあげようかしら?これはざまぁよね?狂っちゃうかなぁ!?ンはぉ♥」


 んん!?何やってるの?この人達は!?


 俺はこの時から…既定路線を大いに外れた事に気付いていなかった…訳では無いが、いくらなんでもこんなの予想できない…





※ほら、また訳分からないって言われるぞ(土下座)テンプレートNTRざまぁ展開が出来ない馬鹿、シオマネキ!皆さんに土下座!スイマセヌ!

 

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