閉幕

勝者と敗者

 翌日、都内某所。

「南條、このお金どうしたの……?」

 安心院の部屋にやって来た南條は、漫画に出て来そうなアタッシュケース二つに大量の札束を入れて持って来た。

 一応確認してみるが、中身は全て本物の万札。総額にして二〇億は下らない額の金を前に、安心院の霊魂が飛び出しそうになった。

「こ、これって……」

「俺の友人知人に、今回の戦いに賭けさせた。四勝三敗。試合の結果から何から全て的中の、一二〇倍チケットだ」

「えっと、一枚最低でも千円だから、一二〇倍で十二万……え、一体、どんだけ買わせたの!? 一体どんだけ賭けたの?! ってか、え?! まさか戦いの結末を予想して、え?!」

「うるせぇ」

 額を指先でパチン、と叩かれる。

 打たれた安心院は額を押さえて涙目になり、押し黙る。

「もちろん百パーセント予想してた訳じゃあねぇよ。ただ一番確率の高い予想が当たっただけだ。一番確率が高いのが俺達の敗北ってのは気に入らねぇが、これで次の軍資金が手に入った。俺が言った連中に、声は掛けてあるんだよな」

「う、うん……昨日の戦いのお陰か、かなり好印象だよ。もしかしたら、誘いに乗ってくれるかも」

「そうか。なら、四つ分の穴を埋めて次だ。次が終わっても次だ。戦って戦って戦って、勝って負けて勝者にも敗者にもなりながら、いつか成り上がってやるぜ。頂点にな!」

 男の高笑う声が響く。

 圧倒的敗者を引き摺り下ろし、絶対的勝者に成り上がる。

 誰もが夢見て、それでも諦めざるを得ないと言いながら諦めていた夢に向かって、強者弱者問わず、皆が頂点を目指し始める。

 勝者が敗者に、敗者が勝者になりながら、戦いは日々続いていく。

 それが勝負の世界。文字通り、勝者と敗者の綴る戦いの世界。転生者大戦という、エンターテインメントだ。

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転生者大戦~ウィナー・アンド・ルーザー~ 七四六明 @mumei

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