アーサー・ペンドラゴンvs芹沢鴨 決着

 “完全開放聖槍抜錨パーフェクト・ロンゴミニアド”。

 “修羅しゅらたち”。

 両者の最強技が激突。

 観客席、TVの前の誰もまともに状況を把握出来ず、衝撃が鎮まる瞬間まで待つしか出来ない。

 が、それは両者を応援する騎士、隊士らもまた同じ。

 彼らは他と違って衝突の様をずっと見守っていたが、最後の最後。本当に最後まで、どちらが勝つかわからなかった。

「……」

「っ、ふぅぅぅ……」

 衝撃が鎮まり、会場は静寂に包まれる。

 皆が戦場のただ一点。衝突が繰り広げられた中央に目をやって、徐々に、ゆっくりと、状況を呑み込み、理解していく。

『こ、これは……!』

 誰も、言葉を発する事が出来ない。

 それは驚愕か。呆然か。唖然か。失われた言葉は戻って来る事なく、間抜けに口をあんぐりと開けるばかりで、何も言う事が出来なかった。

 言葉を発する事が出来たのは唯一、言葉を発する事。事実を告げる事を求められた審判兼、解説のみ。

『あ、アーサー王が、膝を突いているぅ! 芹沢は仁王立ち! まさか、これは、これは……芹沢に軍配が上がったかぁっ?!』

「いや……残念ながら、もう終わっている」

 解説に異を唱えたのは、他ならぬアーサーだった。

 槍を落とした手は痺れ、ずっと痙攣を続けている。膝にも力が入らないのか、項垂れたまま立ち上がる様子を見せない。

 だが最後の一撃を繰り出した形のまま、自分を見下ろす芹沢と違い、アーサーは彼の顔を仰ぐ事が出来た。

 逆を言えば、芹沢はそのまま動かなかった。動く事はなかった。

 血は渇き、肉は枯れた。だがその立ち姿は金剛如来像よりも力強く、武器を向ければ今にも、刀身の砕けた刀を振り上げて斬り掛かって来そうな迫力さえあるが、死んでいる。

 それこそかの武蔵坊むさしぼう弁慶べんけいが如く、いやそれよりも力強い姿で、芹沢鴨は立ったまま絶命していたのである。

「なんて人だ……結局私は、膝こそ突かせるのが関の山で、この人を倒せなかった」

 勝敗は決した。

 常勝の王には、決まっていた結果と言える。

 だが王は、これまで幾人もの英雄、英傑、怪物らと戦って久しく感じていなかった物を感じていた。

 敬意。今まで討ち倒した者達の中で、この感情に達した者は、果たして何人いただろうか。

「良い戦いだったな!」

 皆が言葉を失う中、新選組の近藤がアーサーへと手を差し伸べる。

 手を借りたアーサーを立たせた大きな手は力強くアーサーの手を握り締め、上下に揺さぶった。

「いやぁ素晴らしい戦いだった! 俺としては無念だが、とにかくおめでとう! 西洋の王様! きっとこいつも、満足だったに違いあるまいよ」

「……こちらこそ。芹沢殿と武を競い、争えた事、誠に光栄であった。日の本の新選組。私は決して、あなた達を忘れない」

 アーサーと近藤が強く握手を交わしたところで、新選組の面々から拍手が送られる。

 それに続いて円卓の騎士勢、観客席と伝播していき、会場全体が割れんばかりの拍手に包まれる中、チームルーザーとレジェンズの監督陣営だけが、沈黙を貫いていた。

「やっぱり無理だったんだ……やっぱり……やっぱり……」

「うるせぇぞ、安心院あんしんいん

「だって、だって……」

「勝負はまだ、始まったばかりだ。次の戦いに勝つ事だけを考えるんだよ」

 意気消沈とするチームルーザーは理解出来るとして、いつも通りに勝利を収めたチームレジェンズの総監督ポラリスもまた、素直に喜べない状況にいた。

 勝った事には違いない。

 が、今までは圧倒的な勝利だった。勝利して当然とばかりの結果だった。

 だが今回は紛れもない辛勝だ。誤魔化しようのない辛勝だ。誰もが危ないと思わされた。誰もがアーサーの敗北を予感した。自分でさえ、負けると思った。一瞬でも、思ってしまった。

 常勝の王の勝利を、疑ってしまった。

「いつまでそうしているつもりです?」

「わかってる……次は。次こそは、圧倒的に勝つ。絶対に」

『チームレジェンズ対、チームルーザー! 第一試合! 勝者はチームレジェンズ! アーサー・ペンドラゴォォォン!!!』


 第一試合。勝者、チームレジェンズ。アーサー・ペンドラゴン。

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