第8話

謎のイヌミミ少女に連れられ、旧は「ギルド」に来ていた。町の中心地に位置したそ

は、カウンター、巨大な掲示板、そして酒場がフロア別になっていた。

 日本では夜四時まで飲まされ、朝は始発で仕事が始まるという生活をするほど酒好きだ

った旧。そんな彼は、今、隣にいる少女にカツアゲされ、酒場の椅子に座らされていた。

『いや、どうしてこうなった—————!!』

 ゴクゴクと酒を飲んでいるとなりの少女を横目で見ながら、旧は頭を抱えた。するとイヌミミ少女はドン!とジョッキを置き、

「お兄さん、名前はなんていうんすか?」

 と聞いてきた。とっさに反応に困る旧。

『これはどうすべ・・・旧っていう日本での名前はこの世界では異質な気がするし・・・

そういえばステータスの名前の横にまた違う名前…ネロ・ファリスとかいうのが書いてあったよな…いったんそれで名乗るか…?』

と考え、

「〝ネロ〟って言います。」

 と答える。するとイヌミミ少女は、フーンといった風に頭を動かし、

「いい名前っすね!ウチは〝アス〟っていうっす!見ての通り獣人っす!」

 とはつらつと自分も名乗る。そしてまた酒を飲むのに戻る。ネロはそんなアスを観察する旧。髪はで、フードのついた盗賊風の装備を着ている。左手には金のメリケンサックをつけて、背中に槍を背負っている。身長は大体160㎝弱といったところ。そこまで考えたところでアスがドンっとジョッキを置き、

「じゃ、お互いの名前も分かったことだし、金稼ぎに行くっすよ!」

 そしてまた引っ張られていく旧・・・もといネロ。ここから、〝ネロ〟としての日々が

始まったのだった・・・。

『ってこの子のことも【鑑定】できるんじゃぁ・・・』

 引っ張られながら考える旧。そして実行に移す。やはりできた。すると・・・

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【アス】 ステータス 種族 獣人 LV・42

 

 HP・92000/92000

 MP・45000/45900

スキル

 【体術〝達人〟】【肉体強化】【暗視】【初級魔法】【槍術〝士〟】

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『・・・これだけ?』

 なんか物足りない感が否めないネロ。彼の能力が出鱈目であるために、彼はちょっと感覚がおかしくなっているのであった。

 なんて、考えているうちにカウンターに引っ張り込まれていたネロ。

『ハイオワター。タダ働きかくてーい。まさかこっちでもすることになるとは・・・』

と、意味不明なことを考えながら前を見る。そんな悲壮感あふれたネロの横でアスが

「クエストの受注をするっす!」

と、受付のお姉さん相手に元気にクエストを受けていた。

「今できるクエストですと、ハコア大森林探索と、

魔王領の近くに出現したダンジョンがおすすめですね。

ダンジョンの方ですと、三日後に転移門が開く予定となります。」

それを聞いて即断したアス。

「じゃあダンジョン攻略でお願いするっす!」と、元気に受注していた。

「後ろの方はお連れさんですか?」と笑顔でさされたネロ。

「い、いや俺は違・・・」

「そうっす!」

・・・拒否権などなかった。ついに真っ白な灰となる旧。そんな彼を引き戻したのは、受付のお姉さんの、

「それでは書類を作成致しますので、御二人ともギルドカードを提出下さい。」という一言であった。もちろん旧は持っていない。よし、これで断れる———と勢い込んで、

「あ、僕ギルドカード持ってないです!じゃあやっぱりやめm」

「この人もってない感じなので作成の手続きもお願いっす!」

 もうどう頑張っても逃げられないことを悟ったネロ。そんな彼には目もくれず、一枚のカードを差し出し、ネロのほうを見てギルドカードの説明を始めた。

「ギルドにようこそ!それでは、ギルドとギルドカードの説明をさせていただきます。

まずギルドとは、魔獣や、魔王軍の攻撃などから素材を回収したりという仕事を受託し、

それをクエストという形で冒険者の皆様に斡旋しています。目的としては、冒険者同

士の情報と交流、素材などの価格暴落の防止、冒険者のケアなど、多岐にわたってい

ます。それでは、このカードに手をかざしていただいてもよろしいですか?」

そう促され、うんうんと話を聞いていたネロは言われるがままに手をかざす。すると、

カードに名前、(やっぱりネロ・ファリスだった)と、番号、冒険者ランクと書かれた

丸が浮かび上がった。おぉ~と目をキラキラさせながらその光景を見るネロ。すでに強制

労働という事実は忘れ去っている。アスはそんなネロを見ながらニヤニヤしている。そん

な彼らを見ながら、受付のお姉さんは旧たちの横に魔法陣を展開させて、

「じゃあランクテストに移らせていただきます。今でよろしいですよね?」

と聞いてきた。『いやランクテストってなんだ?』疑問に思う旧。それを口に出す前にアスが、「OKっす!」と答えてしまったことで、旧は強制労働という事実を思い出す。

「それでは闘技場の方に参ります。転移テレポーテーション!」と受付のお姉さんが叫び、発動した魔法陣から放たれた光は、頭を抱えるネロと、

ニコニコのアスを飲み込んでいった————


**************************************

ども!夢幻商会です!

久々の更新となってしまいました!

そして、自主企画の【第二回!読みあい!♡&★をどんどんつけていこう!】

が開催中です!参加いただけると幸いです。

ちなみにこの続きは書きあがっているので、近日公開しようと思っております!

改めて、拝読いただきありがとうございました!



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