第28話 信長の決意

蒼紫と桜は織田の兵に連れられて清州城まで

来ていた。特別、縛られる訳も無く、逃げようと

思えば逃げ出せる程、捕まったとは言えない待遇だった。


真田はこれまでの道のりで見て来た事から、

これは信長が試しているのだと思った。


信長は逃げ出せば追わずに

見逃すように兵士には伝えていた。

敢えてあの真田蒼紫だとは伝えずにいた。

一般兵では殺されるだけだったからだ。


しかし、逃げようとはせずに清州まで来たと言う事は

意味のある逃亡なのだと信長は瞬時に思った。

そして、その内容は非常に重要なものである事だと

直ぐに思った。


そのまま清州城の城下町を進んで、城まで連れて行かれた。

城門には遠目ではあったが、身分のある者が待っていた。

近づくにつれ、兵士たちは急ぎ足になって行き、二人も

足早に城門まで辿り着いた。


「ご苦労だったな。お前たちはもう下がってよいぞ」

兵士たちはお辞儀をして一息ついて来た道を戻って行った。


「真田殿。お初にお目にかかる。私は前田利家と申す。

殿の元までご案内致す。その少女も必要ですか?」

信長には何も話していないのに、まるで何かを知っている

かのように桜の事も聞かれ、蒼紫は背筋が凍りついた。


「はい。この者は桜と申します。私が来た理由は桜の

言葉からこちらに来ましたので是非共にご案内お願い致す」


若武者は少女に目を向けて、二、三度軽く頷いた。

「分かり申した。お二人ともご案内致す」


自分を知りながら城内には殆ど兵士は居らず、

後姿から前田利家を見ただけで、隙の無さから

相当な使い手だと蒼紫は直ぐに思った。

勝家といい、利家といい、

織田には有能な武将が大勢いると感心した。


「殿。真田殿をお連れ致しました」

仕切りは払いのけられていて、大広間になっており、

奥に信長と妻であろう斎藤道三の娘の帰蝶が居た。


「おう。待っておったぞ。入って参れ」

利家が掌を自分に当てた。信長は頷くと一緒に入ってきた。

「さて、一体何があった? 色々考えてみたが、

余には理解出来ぬ。将来性のある若武者が、

織田家に来た理由を一部始終話してみよ」


蒼紫は桜が聞いた事や、これまであった事を

包み隠さず全て話した。


「なるほどのう。帰蝶どう思う?」

「嘘ではありますまい。真田殿は殿も褒めていた程の人物。

殿の心眼はわたしもよく知っております」


「利家はどうだ?」

「何とも不可思議な話ですが、奥方様と同様に私も殿の

人を見抜く力は確かなものだと確信しております」


「おぬしは我らが野武士を使う事は知っておろう。

確かに義元は別として、雪斎を良く知る蝮殿が言うには

蒼紫と桜は織田の兵に連れられて清州城まで

来ていた。特別、縛られる訳も無く、逃げようと

思えば逃げ出せる程、捕まったとは言えない待遇だった。


真田はこれまでの道のりで見て来た事から、

これは信長が試しているのだと思った。


信長は逃げ出せば追わずに

見逃すように兵士には伝えていた。

敢えてあの真田蒼紫だとは伝えずにいた。

一般兵では殺されるだけだったからだ。


しかし、逃げようとはせずに清州まで来たと言う事は

意味のある逃亡なのだと信長は瞬時に思った。

そして、その内容は非常に重要なものである事だと

直ぐに思った。


そのまま清州城の城下町を進んで、城まで連れて行かれた。

城門には遠目ではあったが、身分のある者が待っていた。

近づくにつれ、兵士たちは急ぎ足になって行き、二人も

足早に城門まで辿り着いた。


「ご苦労だったな。お前たちはもう下がってよいぞ」

兵士たちはお辞儀をして一息ついて来た道を戻って行った。


「真田殿。お初にお目にかかる。私は前田利家と申す。

殿の元までご案内致す。その少女も必要ですか?」

信長には何も話していないのに、まるで何かを知っている

かのように桜の事も聞かれ、蒼紫は背筋が凍りついた。


「はい。この者は桜と申します。私が来た理由は桜の

言葉からこちらに来ましたので是非共にご案内お願い致す」


若武者は少女に目を向けて、二、三度軽く頷いた。

「分かり申した。お二人ともご案内致す」


自分を知りながら城内には殆ど兵士は居らず、

後姿から前田利家を見ただけで、隙の無さから

相当な使い手だと蒼紫は直ぐに思った。

勝家といい、利家といい、

織田には有能な武将が大勢いると感心した。


「殿。真田殿をお連れ致しました」

仕切りは払いのけられていて、大広間になっており、

奥に信長と妻であろう斎藤道三の娘の帰蝶が居た。


「おう。待っておったぞ。入って参れ」

利家が掌を自分に当てた。信長は頷くと一緒に入ってきた。

「さて、一体何があった? 色々考えてみたが、

余には理解出来ぬ。将来性のある若武者が、

織田家に来た理由を一部始終話してみよ」


蒼紫は桜が聞いた事や、これまであった事を

包み隠さず全て話した。


「なるほどのう。帰蝶どう思う?」

「嘘ではありますまい。真田殿は殿も褒めていた程の人物。

殿の心眼はわたしもよく知っております」


「利家はどうだ?」

「何とも不可思議な話ですが、奥方様と同様に私も殿の

人を見抜く力は確かなものだと確信しております」


「おぬしは我らが野武士を使う事は知っておろう。

確かに義元は別として、雪斎を良く知る蝮殿から

あやかしの術に長けておる事は知っておる

いずれは京に向かうから気をつけるようとな」


「そなたの噂は耳に入って来ておる。

勝家も言っておったぞ。

まだまだ弱いが久しく見る気概のある若武者であったと

喜びながら笑っておったわ。余も是非見たいと思うてな」


信長は横に控えていた利家に目をやった。

「利家は槍の又左と呼ばれる程の槍使いでな。

おぬしも槍使いと聞いておる。

ここで一つ賭けでもしよう。

おぬしが勝てば望みは叶えよう。

負ければ余の言う事を聞く、どうじゃ?」


蒼紫は一呼吸入れて立ち上がった。

「その申し出お受け致します」


若武者の顏つきを見て、信長は不敵な笑みを浮かべた。









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