サンタはよいこの味方だよ

「宜しくお願いします」

部員は一斉に返事を返す。

「「「「「「宜しくお願いします」」」」」」

前川は部内の様子を一瞥し、

倒れこんでいる、海藤に目を向けた。

「また、中田に挑んだのか、腕が振るえているぞ、やり過ぎはオーバーワークになるからな、気をつけろよ」

海藤は弱弱しく、返事をした。


関の前に立ち、冷たい目で見降ろす。

「どうしようもねえなあ」

顔を手で覆い隠す関。


富田の前に立つ、前川

緊張する二人に優しく問いかけた。

「一体、どうしたのかな」


前川め、重要なときに来やがって、ここは誤魔化すしかねえぜ。


そんなことを考えていると安田が口を開いた。

「富田君が僕を退部にするって言ってるんです」


富田は不味いと思い、前川を見たら、笑顔を浮かべていた。

前川は優しく問いかける。

「何でそんな意地悪なことを言うのかな」

富田は意を決して、言った。


糞、こうなりゃ仕方ねえ、一か八か言うしかねえ。


「サンタに会えないからです」


一同、前川以外、目が点になった。


優しく前川が問いかける。

「どういう事か説明してくれないかな」


「僕たちの部室は名前に田が付く人が4人います。一人減らなきゃサンタになりません、今のままじゃヨンタです。サンタに会わないとプレゼント作戦に負けてしまいます」


沢田以外は目を一斉に溜息を吐いた。

前川は笑顔で出来の悪い子に諭すように問いかけた。


「なあ、考えてみてくれよ」

富田は前川の顔を伺う。

「3よりも4の方が強いと思わないかい」


富田と沢田はあっと驚いた。


そんな前川に富田は食って掛かる。

「じゃあ、なんでサンタに会えないんですか」


前川は笑っていた顔を引き締めた。


「坊やだからさ!!」


驚愕する富田と沢田。


前川は淡々と告げる。

「サンタは年を重ね、世界征服の為といえど、皆にプレゼントを配るために身を犠牲にする。男の中の男、そんな男に勝てると思っているのか?覚悟があるんだったら、プレゼントに要らないって書いてみるんだな」


富田は崩れ落ちた。


畜生、敵の作戦とはいえ、しっかり貰ってしまっていた。

悔しいが認めるしかねえ、完敗だ!!

「僕の負」

続きを言おうとしたとき、沢田が口を押えた。

沢田は首を振っている。

そうだ、俺たちの戦いはまだ始まってねぇ、これからだ!!

俺たちのそんな様子を前川は無表情で眺めている。

ここから、立ちあがって見せるぜ!!


前川はそんな二人の様子を眺め、ふんふんと頷いた。

「戦う気持ちが付いたら、プレゼントは要らないっと書いとけよ」


俺は来る戦いに備え、気持ちを決めるために返事をした

「当り前よ」


前川はうんうんと頷いた。

「これで取り消したら恥ずかしいからな」


男が言ったことを取り消すわけねえだろ。

「笑止!!」


沢田を除く部員はやっちまったなぁと思いながら、富田を見た。

そんな富田を前川は見ながら間違えた答えを正す教師の口調で言った。

「あー、お前は根本的な間違いをしているぞ」


俺が根本的な間違いだって、何の冗談だ?


そんな疑問に駆られている富田を気にせず、前川は続ける。

「丘野、書類手続き終わったぞ」

今まで、沢田と呼ばれていた人物は新しい名字で呼ばれ、返事をした。

「ありがとうございました」

前川は富田を見て、

「今日から彼は丘野君だ、サンタになったな」

一同はきょとんとしていた。

丘野も含めて

「それに辞めるとしたら、それは安田じゃない、お前だ」


衝撃的な答えを受け入れられないまま、富田は固まった。


そんな、富田を置き去りにしながら、前川は安田の元に行き、パソコンの画面を見ながら尋ねる。

「おい、出来たか?」

安田は不敵に笑う。

「ええ、皆のお蔭でできましたよ」


二人を除く、皆が何のこと思案していると


「中田君と海藤君から運動のデータを山内君と丘野君の対戦データから盤ゲームを元に人工知能のアルゴリズムを関君からはお楽しみシーンを作れました」

前川は笑う。

「流石だ、売り上げは手数料として、持って行ってくれ」

安田は怪訝な顔で前川を見る。

「お金は要らないんですか?」

前川はふっと笑い、

「俺はいいものを見せてもらったからな、一プレイヤーとして、ただでこのゲームをやらせてもらう、それで十分だ」

「学校でエロゲを作らせるなんて、とんでもないかただ」

「スキルも身に付いたし、金も入ったし、いいじゃなねえか」


そんな中、富田が口を開く。


「サンタが来ねえ」


前川は笑顔で富田に語りかける。

「流石に可哀そうだから、山内と試合をして、勝てたらいいぞ、そうだな、

山内、ハンデとして、王将のみで戦ってやれ、審判は俺がやる。余りに手こずったりすると皆に言うからな」


おいおい、山内が強いからって流石に舐めすぎじゃないか?

たく、こんなんで勝っても嬉しくないぜ。

でも、プレゼントの為なら俺は鬼になる!!

「さあ、始めようぜ」


富田は負けた。


そして、安田は子財産を作った。

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嗚呼、垣中総合部 郷新平 @goshimpei

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