第14話 放課後の勉強会を経て


「明人そろそろ休憩を──」


「神宮寺、そこ途中式間違ってるぞ」


「むぅ~~~っ」


 金曜日の放課後。

 神宮寺の赤点を回避するために、今日も今日とて勉強会を開いていた。

 月曜日から始めたこの勉強会は、水曜日を息抜きの日としたため、今日で四日目となる。

 さすがに週の終わりとあってか、神宮寺にも疲れの色が出ているようで、ぼぅーとしている時間も多くなってきた。


「そろそろ休憩にするか~」


「うむ! ところで明人よ。ゆきゆき最新話のラストだが──」


 と、休憩にした途端にアニメの話を始めるのだから、中々に図太い奴である。

 散々、昼休みに議論を重ねた筈だが、まだ彼女は話足りないらしい。

 そう言いつつ、俺も満更ではなく、趣味の話で盛り上がれるのは素直に嬉しい。

 あとは友人が赤点を回避してくれれば、言うことはないのだが........


「結構順調だな。土日も一人で勉強できるか?」


「わ、我は黄昏より出ル者! 勉強を怠って現し世の虚像など見ないし、勿論、盟友が見てないからといって休息を貪るような事はない。だから安心して大丈夫だぞ? ........多分」


 そう語る神宮寺の目は泳ぎまくっている。

 なるほど、なるほど。


「よし! 大丈夫じゃないな!」


「なぁっ........!」


 まるで予想外──というような反応をする神宮寺。

 分かり易過ぎてこっちがびっくりである。


「一日中とは言わないさ。せめて二時間、三時間でもやっておきたいとは思わないか?」


「................だって数学好かんけん」


「何か言ったか?」


「い、言っておらぬ........」


 神宮寺には余裕を持ってテストに望んでもらいたい。

『後少しで赤点を回避出来たのに』となってしまっては目も当てられないからだ。

 休日にまで勉強なんて、ちょっと可哀想な気もするが、夏休みの事を考えればそれも致し方ないだろう。


「土曜か日曜日に集まって勉強会でもするか?」


 そう言った瞬間に、神宮寺の身体が跳ねた。


「それは明人の家でか!?」


「いや、別に俺の家じゃなくても、図書館だっ──」


「仕方あるまい! 盟友の誘いなら断る事は出来ぬな!」


「──ったり、落ち着いて勉強出来る場所なら何処でも........」


「はぁ~! お友だちん家に行ってみたかったっちゃんね !」


「........神宮寺、話聞いてるか?」


 先ほどまで、ぐでーっとしていた彼女だが、今は水を浴びた魚の様に目を輝かせている。

 そんなにキラキラした目を向けられては断るに断れないというものだ。


「分かった、俺の家で勉強会しようか」


「仕方あるまいな! 我の本当の姿を見せる時が来たようだ! 神の休息の日にて盟友の魔城に向かえば良いか?」


「おk、日曜日な」


 神宮寺の口調がいつにも増して中二懸かっている。勉強をするだけの予定だが、そんなに楽しみなのだろうか?


 それはそうと、日曜日までに部屋の片付けをしないといけなくなった。

 散らかった本棚を整頓して、神宮寺用の椅子をリビングから移動──いや、ソファーがあるから大丈夫か。お菓子何かも必要だから、後は──

 と思考を巡らせた所で、自分も少し楽しみなのではないかということに気づく。


 考えてみれば自宅に友達を招いたのも、かなり前の出来事だ。

 中学に上がってからは、友達と呼べる様な奴も────まぁ、一人を除いていなかった訳だし、心の何処かでは『友達を家に招きたい』という気持ちがあったのかもしれないな。


「明人よ、断罪の黒騎士シリーズのブルーレイ以外に持ち物はあるか?」


「神宮寺、さては勉強する気ないな?」


「全シリーズ見るのは無理であるから、やはりシーズン1か?」


「まぁ、シーズン1は欠かせないだろうな。........休憩の時間にちょっとだけだぞ?」


「分かっておる。鑑賞の間にちょっとだけ、勉強もやる予定だ」


「ダメだ、こりゃ......」


 こと勉強に関しては不安が残る返事だが、そこは本人のやる気と俺の指導次第だろう。


 待ち合わせ場所や、集合時間などを話し合いながら俺達は下校を開始した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

方言の可愛い中二病美少女をからかうのは犯罪ですか?いいえ、合法です。 岡田リメイ @Aczel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ