第12話 ささやかな仕返し
「ふぅ~美味しかったな明人」
「結構ペロッと食べれちゃったな」
パフェを食べ終えた俺たちはスプーンを置いて一息つく。
そこそこ大きいパフェだったが、二人で分け合った事もありすぐに食べれてしまった。
幸せそうな神宮寺の様子から察するに、彼女も満足してくれた事だろう。
しかし、俺の胃袋はまだ満たされていなかった。
少し食べた所為か、胃袋が刺激され余計にお腹が空いてしまったのかもしれない。
甘い物を食べた後はしょっぱい物が食べたい。そんな気持ちが沸き上がってきた。
「お待たせ致しました」
ふと近くの席に視線を向けると、店員さんがフライドポテトを運んでいる姿が目に入った。
揚げたてのポテトが自分を呼んでいる。
そう思った俺は神宮寺に声をかけた。
「神宮寺、ポテト頼んでもいいか?」
「甘い物の後はしょっぱい物と言うわけだな?我もまだ小腹が空いておる。二人で分け合おうぞ」
「さすがは神宮寺だ。良く分かってる」
俺は店員さんを呼びポテトを注文した。しばらくするとケチャップが添えられた山盛りのポテトがテーブルに届く。
俺はカリカリに揚げられたポテトにすぐ手を伸ばす──事はなく、神宮寺の方に顔を向けた。
「どうした明人食べないのか?」
「いやケチャップがあるだろ?神宮寺が顔に付けないか心配で見てたんだ」
「なっ!」
「良ければ俺があーんしてやろうか?」
「あ、明人くん!うちん事バカにしとー?さすがにポテトくらい自分で...あむっ!?」
俺は話している最中の神宮寺の口の中にポテトを放り込んだ。
神宮寺は不服そうな顔をしながらモグモグとポテトを咀嚼している。
「どうだ美味しいか?」
「......うまか......うまかばってん、また明人くんにからかわれた!」
非常に悔しそうな顔をしている神宮寺。
からかいがいがあるんだからしょうがないじゃないか。
「いやだったか?」
「嫌やなかばってん、はがいか!」
「え?なんて?」
嫌じゃないとまでは聞き取れたが、その後が何を言っていたのか分からなかった。
彼女は腕を組んでむすっとしており、きっと悔しい!的な事を言ったのだと推測出来る。
「もう明人など知らぬ!我は飲み物を取ってくるぞ!」
神宮寺は怒った顔のままドリンクバーの方へ行ってしまった。
俺は機嫌の悪そうな神宮寺を見て、少しやり過ぎてしまったかな?と今さらながらに後悔する。
自分の中ではそこまで酷い事をした覚えはないが、彼女からすれば嫌だったのかもしれない。
あれ?でも嫌じゃないって言ってたよな?
じゃあ何であからさまに機嫌が悪くなったんだ?
そんな事を考えていると、ふと後ろから肩を叩かれる感覚があった。
俺は反射的に振り返る。
「......ん? って冷たっ!!」
瞬間──頬に冷たい何かが当たった。
驚いた俺が振り向いた先にあったのは氷が入ったメロンソーダのグラス。
そして悪戯に成功した子供の様に笑う神宮寺の姿があった。
「引っ掛かったな明人!」
「え?」
「ふふふ! 明人がいつも我をからかうから、我もやり返したくなったのだ。驚いたか?」
先ほどの怒った顔はどこにいったのやら。
彼女は無邪気な笑みを浮かべて面白可笑しそうにしていた。
一連の動作から察するに、彼女は敢えて怒ったふりをしていたのだろう。
まさか、神宮寺に仕返しされるとは思ってもみなかった。
「やられたよ神宮寺」
「これで今日のところはお相子であるな!」
「あぁ、これからもっともっと神宮寺をからかわなくちゃいけなくなった」
「なっ! これは明人が我をからかうから......」
「覚悟しとけよ? 神宮寺」
「あ、明人~~!」
まったく。一緒にいて飽きない奴だ。
俺は焦る彼女を見ながら、たまにはからかわれるのも悪くないと思うのだった。
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