第11話 さすがだな
高さは20cm程だろうか。
純白のソフトクリームに突き刺さっているのはチョコレートで出来た極太の剣。
下の層はチョコやホイップクリーム、キャラメルソースやバナナなどで出来ており、味の方も期待できそうだ。
よくよく見れば、断罪の剣の模様まで再現しており、かなり本格的だと感じる。
「おぉ~~!」
神宮寺が感嘆の声を漏らす。
彼女が驚く様にそのクオリティは思っていたよりもずっと高かった。
コラボパフェにも当たりハズレがあると思うが、これは当たりの部類に入るだろう。
「すごいな明人!食べるのが勿体ないくらい本物そっくりだぞ!」
「あぁ、断罪の剣の模様まで再現しててちょっと感動した」
「うむ。しかし、断罪の剣は1つ。二人で割って食べるか?」
「いや、俺は見ただけで満足だ。断罪の剣は神宮寺が一人で食べてくれ」
「いいのか明人!?我が食べてしまうぞ?」
「気にしなくて大丈夫だ。食べちゃいな」
神宮寺は断罪の剣をソフトクリームから引き抜いた。
「我は裁く者。我は断ち切る者。この剣が罪を浄化し、我はただ導くのみ。さぁ審判の時間だ。終焉の懺悔を持って汝を死へと
神宮寺が黒騎士になりきり、アニメでも良く使われる決め台詞を吐いた。
そんな台詞を口ずさみながら、終始ニヤニヤとした表情でこちらを見ている。
これはオタク同士特有の『これお前も知ってるでしょ?』的な視線だ。
分かる、分かるぞ。確かに言ってみたい台詞ではあるよな。神宮寺ならやってくれると思っていたぜ。
俺は右手でグッドサインを作りニヒルな笑みを浮かべる。
彼女はそんな様子に満足したようで、パクッと断罪の剣を口に運んだ。
「ん~!うまか~」
一口では食べ切れなかったようで、何口かに分けて食べる神宮寺。
その途中、剣のガードの部分に付いていたホイップクリームが神宮寺の鼻にちょこんと付いた。
「明人食べないのか?我の顔に何か付いているか?」
「い......や、何でも........ない。俺も........食べるよ」
俺は必死に笑いを堪え、パフェを口に運ぶ。
すると、幸せを感じるような甘さが口一杯に広がった。
今すぐにホイップクリームが付いてると指摘しても良かったのだが、それでは面白くない。
本人が気づくまで黙っていよう。
「下の方にキャラメルソースが入っていたぞ!ソフトクリームと絡めて食べれば最高に美味だ!」
神宮寺は鼻に付いたホイップクリームに一向に気づく気配もなく、パフェを食べ進めていた。
我慢していた俺の笑いも少しずつ漏れ始め、そろそろ黙っているのが苦しくなってきた。
「そう......だな。美味しいよなっ......くっ、くく」
「先ほどからどうして笑っているのだ?何か面白い事でもあったのか?」
「自分で......くっ......見てみな........っ」
俺はスマホのカメラを起動し、インカメに切り替え、画面を神宮寺の方に向けた。
「なっ!」
神宮寺は直ぐに気づいたようで、急いでお絞りを使い鼻を拭く。
「な、何で早く言うてくれんやったと!?」
彼女はお絞りで鼻を隠しながら恥ずかしそうにしている。
「すまん。面白かったからつい」
「酷かよ明人くん!あー恥ずかしか~!」
茹で上がったタコの様に顔を真っ赤にさせる神宮寺。
そんな彼女は恥ずかしそうそうにジト目でこちらを睨んでいた。
さすがだな神宮寺。こんな反応をするから俺もからかってしまうのだぞ?
そんな彼女に満足し、俺はまたパフェに手を伸ばすのだった。
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