メイジア★プレッジ

江倉野風蘭

壌 EARTH

序章 Prologue

序章

 時に、西暦1996年9月18日──この日、地球史上六回目の大量絶滅が起きた。


 それはまず南極から始まった。

 西南極の氷床が急激に溶解し、一週間足らずで完全に消えてしまったのだ。 

 これにより海水面が20メートルほど上昇し、NYニューヨーク、ロンドン、ホンコンシャンハイ、シンガポールなどといった主要都市があらかた沈んだ。

 日本においては東京、名古屋、大阪の三大都市圏が地図から消えた。もっともこんなケースはまだマシな方で、オランダに至っては国土そのものがほぼ全て失われたという。

 

 続いて全世界の平均気温が5度も上がり、狂っているとしか言いようのない極端な気候が地上を襲うようになった。

 日本列島からは四季が消え、殺人的に暑い夏と地獄のように寒い冬が半年ごとに訪れるようになった。

 

 各国はこの破局的な危機を乗り越えるべく民族も宗教も超えて団結しようとしたが、完全に一つにはまとまりきれなかった。

 紛争とテロリズムの嵐が世界中を吹き荒れ、いくつかの中小国が崩壊し、千万人単位の難民が発生した。


 そして結局、2006年までの10年間で、世界の人口は10億人にまで減った。

 96年当時の人口が約60億人だったので、ざっと50億人ほど死んだことになる。 

 生き延びた人々はこの惨劇に『世紀末の大災厄ミレニアル・カタストロフィ』という名前をつけ、変わり果てた自然環境に文明の力をもって適応することにした。

 

 そして月日は流れ……時に、西暦2050年のこと。

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