第13話






 ――なんだこれ……夢? だよね。


 イザベラは夢を見ていた。

 神秘的な森と草原に覆われている人工物が余計不気味さを漂わせる。

 イザベラはなぜか隠れながら厳重な警備に忍び込んでいった。


 という文字が辛うじて読み取れたアヴァロン。

 どうやらこの国は竜の支配する領域であるらしく、隠れながら様子を伺うと人間は存在しない。

 もしかして、夢の中にしかないところとか?

 すごいなあ。

 若干来た時より、心が弾んでしまった。

 気を取り直して、慎重に進んでいく。


 どんどん神秘的な森と草原に覆われていた。竜たちの影が森の奥深くに差し込み、彼らの存在が自然と調和しているように感じられた。

 イザベラは慎重に足を踏み入れていく。

 自らの存在を竜たちに気付かれないようにするため。


 やがて、アヴァロンの中心部に位置するであろう竜の巣穴にたどり着いた。

 巨大な岩山……ではなく、ビルのような金属製の建物に木々が絡まっていた。

 それらがそびえ立っていた。

 なんとなく惹かれていってイザベラはそこに入っていった。


 暗闇を進んでいく。

 所々大きい岩があると思っていたが、それは巨大な竜たちだった。

 驚く声を喉で押さえて飲み込んで、眠っている邪魔にならないようにした。

 なぜぼくがここに来ちゃったのか。

 この竜たちじゃなさそうだし……。

 眠っているのを邪魔しないように進む。気配も感じないしと、隠れることはせず歩いて行った。

 竜が眠っている部屋を抜けた先は、誰もいなかった。

 しかしその金属性の壁には竜だけでなく様々な生物がある竜と楽しくじゃれ合っている絵ばかりが飾られていた。

「うわぁ……」

 あまりの多さに驚きと若干引いてしまった。

 竜が見た景色なのかなあ。

 その絵を流し見ながら進んでいくと、イザベラとイザベラと同じ顔をした少年が楽しそうに遊んでいる絵があった。まさか自分の絵があるとは思ってもなくじっと観察してみたが、それ以上の情報がない。

 ――もしかしたら、この絵全部ぼくの記憶とか?

 船長記憶喪失だっていっていたし。

 それなら一から見直してみようかな。

 と後ろを振り向いた瞬間『また会ったな』と声がして、イザベラは目が覚めた。

 「はあ……」

 ――やっぱりぼくの記憶かもしれない。

 いっぱい絵があったし、もしかしたら何かわかるかもしれなかったのに。ぼくと同じ顔をした子も気になったし……。

 もっと見ておけばよかった。

 色々と後悔しつつ、二度寝すればまた見られるのではともう一度寝てみるが、いい朝を迎えただけだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る