第10話 秘密道具
「やっぱり言わなくていいわ」
「え?」
「言いたくないってことは、言えない事情でもあるんでしょう? なら無理に言わせるのも良くないと思ってねえ」
助かったあーっ! うっかりここでバーサーカーですとか言ったら、即報告されて牢獄行きだもんな。
俺は金銭が入った袋から半分、コインや紙幣を取り出す。
「これでどれくらい買えるんだ?」
「ん~、そこそこいい武器なら二つってとこ。質を気にしないなら五個くらいは買えるんじゃないかなあ。まあものによるけどねえ」
「じゃあ一つとっておきの斧をくれ。それ以外は別に質はどうでもいいから、とにかくたくさん武器が欲しい」
「……もしかして転売する気?」
「転売~? ンなことするかよ。これあ全部俺が使うんだよ。詳しくは話せねえけど」
「……まあいいわ。なぜなら武器屋だもの。お客の事情を聴く場所じゃないものねえ」
すると店主は、店にかかっている様々な武器を集めた。そして店の奥の方に行ってしまった。
ずいぶんと不用心だな、これは持って帰れと言ってんのか? よく分かんねえな。
「お待たせ」
すると店主が戻ってきた。店主の手にはかなりの大きさの斧が握られてあった。全く似合わない組み合わせだ。
「ずいぶん不用心なんだな。ここで俺がこの武器持って帰ってたらどうしたんだ?」
「……私、昔そこそこ強いギルドに入っててねえ。王子様にも目をかけてもらったほどの実力だったのよお? まあ戦闘向きのクラスじゃなかったからすぐにやめたけど」
つまり脅してんだな。盗みをしようもんなら、お代に命を頂くと。
怖えーな。今見ると斧も似合って見えてきた。
ふー王子かあ。あのくそ野郎ねえ。
「ま、そんなことにならなくて良かったけどねえ。全部持てる? 結構重いけど」
「まあ何とかなるんで大丈夫っす」
買ったものは、剣が二本。槍が一本。そして質のいい斧を一本だ。
剣二本は腰に差し、槍は背中に装備。斧は……どうしよう。
「あ、この拾った弓。使わねえし捨てといてくれ」
俺はゴブリンから奪った弓を肩から降ろす。
「売っちゃっていいかい?」
「お好きに」
「じゃあありがたく頂くわあ」
弓と矢を差し出す。
「じゃあお礼にイイモノあげちゃう」
さて、次は服だな。
今はぼろ布を纏っているから何とかなっているが、長くは持たない。
斧? ああ、あれなら店主がドラえもんみたいな道具をくれた。特殊なテープを張ると、対象のものを自由に小さくできる奴だ。
今はポケットに入れてる。
ご都合主義だが、使える者は全部使っていくぜ。
「服~は~洒落ててえ~格好いいのが~欲し~いなあ~」
「えらく上機嫌だけどなにかあったの?」
「うおっ!? なんだよ、驚かせんなよアサ」
後ろから声をかけてきたのは、先ほどと全く様子の変わっていないアサだった。
「お前買い物もう終わったのか?」
「うん。結構すぐに食料は集まったし。予備の武器も買えたから」
「おー、食料はどこにあるんだ?」
「縮小テープでちじめてる」
でたなドラえもんの秘密道具。
便利すぎるだろ。
「俺今から服買いに行ってくらあ」
「じゃああたしもついてく」
いやーそれにしてもラッキーだった。
俺一人だと時間の読み方が分からねえのと、地図も土地勘もねえからさっきの場所にも戻れねえからな。
アサと再会できたのは本当に幸運だったぜ。
「そういやノボルってこっちの世界の時間の読み方、分かる?」
「分かんねえ」
「地図は持ってる?」
「いーや持ってねえな」
「……」
「痛え!」
理由は何となく察せるが、アサに背中を一発叩かれた。
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