第8話 ボロボロ
「マナって言うのは、RPGでいうMPみたいなやつのこと。スキルを使うために必要で、使えば減るし休めば回復する。マナの量は人による。アーユーオーケー?」
「ああ、何となぁく分かったぜ。つまり早めに全員潰せばいいってことだろ」
「あーうん。そーゆーこと」
アサは抑揚のない声を発した。
「んじゃあ行くか。俺が暴れるから、その後始末を頼むぜ」
「はいはい」
俺は扉から中に走って入る。
もう油断しねえ。最初っから全力だっ!
「んじゃあとっとと終わらせてやるから覚悟しなあっ!」
俺は槍を強化し、骸骨どもを薙ぎ払う。暗くて良く見えないが、まあすぐ終わるだろ。
槍を音がする方、動いた方、見えるもの全てに振るう。骸骨は幸いなことに、頭を吹っ飛ばせば立ち上がってこない。
「おらああ!」
頭が狙いにくい時は足だ、足を狙う。そうすれば、奴らは立ち上がれねえから動きが悪くなる。逆に腕や体を狙っても、あまり効果があるようには見えない。
というか考えも無くエモノぶん回してっけどよお、あいつ当たったりしてねえよなあ? まああいつなら何とかすんだろ。
という訳で仕事再開、ノルマは全滅。ほんとクソゲーだぜ。
「さっきはよくも俺ん体に傷つけまくってくれたなあ~。お返しはてめえらの命全部だ! まとめて一括で払えよ!」
こいつら骸骨だけど命ってあんのか? まあ細かいことはどーでもいいや。動けねえなら死んでんのと一緒だろ。
ぐしゃ、ベキッ、ゴリッ、バキンッ!
次々に敵を粉砕していく。
やっぱり初めからこうしてりゃあ良かったんだ。
どれだけかは分からないが時間が経ち、骸骨もあらか片付いた。
「案外楽な仕事だったなあ。さて、お宝探しを始めましょ~」
「お宝ならもう見つけといたから」
「ってめえ! ずっと出てこねえと思ってたらよお、俺に隠れてこそこそ楽しいことしやがって!」
「メンゴ」
「んの野郎……」
「じゃあはい。これ報酬ね」
するとアサは、金貨の入った麻袋を手渡した。
俺はそれを受け取ると、意外と重みがあることに驚いた。
「これ……全部俺が貰っていーのか?」
「うん。あたし分はもう取ったから」
「やっぱお前良い奴だわ。悪かったな、疑ったりして」
するとアサはボソッと何かをつぶやいた。
「……単細胞」
「なんか言ったか?」
「いや、何も」
「まあいいや。んじゃあ三階行こうぜ。どんくらい時間かかんのか知らねえけど早いに越したことはねえだろ」
「う~ん、それなんだけどさ」
彼女は部屋の端まで歩き、地面にチョークのようなもので何かを描き始めた。
近くによって見てみるも、やはり良く分からない。魔法陣のようだが。
「なに描いてんだ?」
「記憶陣。特殊なチョークでこの魔法陣を描くと、一回だけダンジョンの外に出られるし帰ってこれるの。ただこのチョークは貴重だし消耗品だから、大切に使わないとね」
彼女は魔法陣を描き終えると、すっと立ち上がった。
「一回街に戻らない? あんたの武器、もうほとんど使い物にならなそうだし、あと服装もボロボロの制服って防御力ゼロだし」
そういえばさっきの戦いで、槍は壊れはしなかったものの、強化が解けた今見てみるとかなりボロボロだ。壊れる一歩手前といった感じだ。
服も、血で赤く染まったり、破れたりしていて悲惨な状態だ。
「あー確かに街でいろいろ調達してえのはやまやまなんだが……。俺指名手配されてると思うんだよねえ」
「じゃあ変装しちゃおう。よし、こっち来て」
すると俺はアサに何かを顔につけられた。
「何だこれ!?」
「仮面。福笑いみたいな仮面だけどまあ我慢して。あと服は……あ、この布使えそう」
俺は落ちていたぼろ布を、マントのように羽織った。
アサも、黒い上着のフードを深く被った。そして眼鏡を掛ける。
するとアサは苦笑いを表情に浮かばせた。
「実はあたしも色々あって指名手配されてるんだよねえ」
「おいおいこのコンビ最悪じゃねえか!」
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