第2話 間奏~不協和音~

 異なる音が互いに重なり合い、和音を奏でていた。だが、間抜けな音がして音が止んだ。


「そんなに歌いたくないのか、メルよ」


 ヴィータはメルに笑いかけた。メルは苦い顔をするだけで、何も言わなかった。ヴィータはそうかと笑い立てた。聖歌隊が集まって談笑を始めると、メルはひっそりと抜け出した。


 メルは静かに、精霊たちを見守るアマレ見た。


 メルは考えていた。もし、自分があのお方を裏切ればどんな悲劇が起きるかと。メルルは邪悪な考えに、おぞましさを覚えた。穏やかな聖歌隊の笑い声に、沸々とした憤りを持っている自分にも驚いた。


 ”憎い、俺はお前が憎い”


  彼の怒りの矛先は世界の創造主たるアマレに向けられた。



 不意に、彼の体を温かく覆ったものがいた。火の精霊、イーディスであった。


「一緒に歌わないの? 」

「.....え? 」


彼は驚いて「見てわからない? 」と聞いた。

 

「何言ってるんだろう、この子」


 無邪気に笑うイーディスは、ほかの神々とは違い幼かった。


「それは見てわかるじゃない」

「.....じゃあ、なぜ聞いた」

「じゃあ、答えるわね。”気になったから”」


お返しとばかりに冗談をいうイーディスとメルは、お互いの顔をまじまじと見た。


「別にさ、姿かたちなんて私たち要らないのにね」

「.......それは言ってはダメだろう。そんなこと言ったらすべておしまいさ」

「いいじゃない、たまには悪いことも必要だわ。疲れるもの、真面目に生きるのは」


メルは同意だった。


「二人でさ、抜け出してみない? 」





 

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