ちいさな蛇のおおいなる決意

野森ちえこ

守護者

 私は人間の少女と暮らしている。

 黒髪に空色のカチューシャがよく似合う彼女は私をかわいいという変わり者だ。

 一般的に私は人間から嫌われる。いや、私個人というより、私の種族が嫌われているのか。なにも悪いことをしていなくても、怖い、気持ち悪いと忌避されることが多い。しかし世の中には、嫌われ者を好く変わった人間たちもいる。彼女もそのひとりなのだろう。

 少女との生活はとても心地よかった。彼女はいつも惜しみない愛情を注いでくれる。だが私とて、もらってばかりではいられない。だから誓った。彼女の守護者となることを。いつか彼女に愛する者ができたなら、その者も含めて守ってゆこうと誓いを立てたのである。


 〜〜〜


「え、なんだこいつ、ちっさ! ほっそ!」

「ね、ね、かわいいでしょ〜。手のひらサイズなんだよ」

「しかもなんだ、ずいぶん目がつぶらだな。蛇っぽくねえっつーか」

「でしょ〜?」


 黒髪に空色のカチューシャの少女が連れてきた茶髪の少年。

 彼女にはふさわしくないように見えたのだが、私に触れる手が思いのほか丁寧だったから、少しようすを見ることにした。


「こいつ、これで大人なのか?」

「うん」


 私は蛇と呼ばれる種族である。

 カラダは小さくとも、目がつぶらであっても、立派な蛇なのである。

 私は少女の守護者となった。


「マジかー。つぶしそうで怖えな」

「やさしくねー」


 誰がなんといおうが、私は彼女の守護者なのである。



     〜おしまい〜


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ちいさな蛇のおおいなる決意 野森ちえこ @nono_chie

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