第3話 この世界は



『何故、そう思うんだい?』


「ふふっ、ただの“勘”だねぇ~………ただの戯れ言だと思ってくれると助かるけど?」


『……まぁ、そういう事に』


「ただねぇ、覚えておいてくれるかなぁ?“カミサマ”?」


『……?』



シグマは笑みを浮かべたまま煙草を掴んでから、光の球体の方を見ては目を細めて指から炎を出して煙草を消し炭にする。



「ジャンヌちゃんを泣かせたなら、苦しませたなら……わかっているよな?」


『……肝に命じておこう』


「シグマさん?」


「ふふっ、なんでもないよ~?ただねぇ、気に食わないだけだから」



シグマが優しく微笑んですり寄って来たクロネコの頭を優しく撫でると、光の球体はシグマを見てからジャンヌの方を見る。



「“カミサマ”?」


『いや、なんでもない』



光の球体はユラユラと浮遊してから、何かを考えているのかジャンヌの目の前から消え去る。



「さて、食べ終わったぁ?」


「あ、はいっ」


「じゃあ、部屋に案内するから」



その日は仮宿な感覚で無事な部屋にて休むことになったジャンヌは、その部屋のソファーベッドに座っては色々と整理をしていた。


この世界について、まだ思い出せる範囲の事を整理していく。



(まずは、この世界について)



この世界には、“結晶大樹”と呼ばれている“世界樹”が世界の中心にて存在している。

それによって、人々や生き物は様々な恩恵を貰っている。


“結晶大樹”からは“マナ”という“魔力の源”が放出され自然界へと溶け込んでは、自然界に“魔力”を宿らせ恵みを与えている。


それの副産物が“マナリーフ”と呼ばれている結晶の花が、人々の生活の基盤となる“電気”や“火”といった大切なモノの核として使われている。



(だけど、確か本編開始時には“マナリーフ”が枯渇していて帝国が独占していたんだっけ?)


(でも、その帝国が独占するようになったのは……)



ジャンヌは“シグマ・クーロン”を思い浮かべては、さっきの“カミサマ”とのやりとりを思い出していた。



(あの時だけ、少し怖かった……)


(何か“カミサマ”関係に対して、凄く冷たいというか……)



“シグマ・クーロン”。


この世界の物語では、裏で暗躍しては帝国を操り世界を作り変えようとしていた。

その行動に関しては、1週目では詳しくは語られていない。


とある雑誌に書いてあったのは、“2週目にて全てが分かります”という事だけだった。


そのため、攻略本にもサイトにネタバレされないように手が回されていたようだ。



(あのゲームでの推しは、確かにシグマさんだけど……)


(いいのかなぁー、黒幕に拾われる状況って……)


「それに、今はどの辺の物語なんだか知りたい」


(出来れば、好きな人達を生存ルートに導きたいし……)



ジャンヌが寝転がると同時に、光の球体が顕れてはジャンヌの顔の間近に止まって浮遊している。



『救いたいかい?』


「え?」


『キミが失いたくないというなら、私はキミの手伝いをしたいんだ』


「“カミサマ”……」


『失いたくないのならば、自ずと動かないといけないだろう?私とて、妹が育てあげた世界の民を喪失させたりしたくない』



光の球体は微かに震えながらも目の前でユラユラと動いていて、ジャンヌは両手を持ち上げては球体を両手で包むようにする。



「“運命”って、足掻く事が出来ます?」


『あぁ、やろうと思えば君ならば出来ると思うよ』


「…………ねぇ、“カミサマ”」



ジャンヌは眠そうな表情をしながらも、手の中にいる光の球体を見つめていた。



「もしも、救えるなら救ってもいいですか?」


『あぁ、キミが望むならば』


「じゃあ、私は……」



ジャンヌは手を下ろしてから眠ってしまい、光の球体はジャンヌを暫く見下ろしてからジャンヌの耳元へと行き小さく何かを呟いてから消え去る。


それを扉の隙間から眺めていたのは、クロネコ一匹だけである。



「……みゃぁ」



クロネコは一言鳴いてから、自分の主の部屋へと走って立ち去っていく。


次の日となりジャンヌは眠そうにしながりもリビングへと来ると、シグマとクロネコそれと別の知らない人が立っていた。



「あぁ、ジャンヌちゃん」


「おはようございます……」


「ん、おはよー」



シグマの隣の席に座っているのは、黒いフード付きのローブを着ている人物でパンを千切って食べている。



「えっと……?」


「あぁ、“彼”?彼は、俺の仲間の一人だよ」


「お仲間、さん?」



フード付きのローブの人物はフードを外すと、淡い金色の髪色をさせた背中ぐらいの長さの髪を緩く三つ編みにして束ねており、オレンジ色のキツめなツリ目をさせた瞳をしていて、軽装な騎士のような服装をしている男性なのが分かった。



「オレは、コイツの“右腕”としてやっおる……名は“ファントム”や、よろしくな!嬢ちゃん」


「あ、はいっ!えっと、その、……ファントムさんは、どうして此処にっ?」


「ん?仕事が終わったから、次の仕事についてコイツに聞きにきた」



ファントムは最後の一口のパンを口に含んでからシグマを見れば、シグマはジト目でファントムを軽く睨んでいた。



「いやー、そのー?悪りぃーって、思ってるって!」


「……失敗したくせに」


「うっ」


「終わらせては、いないよねぇ?“お・し・ご・と”?ん?」


「あ、ハイ、未完遂デスネ」









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巻き込まれ転生したら、黒幕に拾われた件について。 @Himmel-kanato

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