第3話


夏休みになった。

カリキュラムの課題は、1年前にTVで流行っていた胸キュンラブコメが映画化されたので

観て感想文を書く事と、

ボーリングをする事。


あんな映画を男子と観るなんてドキドキすると、思っていたら、

空君は、始まる前に、ポップコーンとか色々食べて、映画が始まるとイビキをかいて

寝てしまった。小学生か!!

一緒にいて恥ずかしくて、違う意味でドキドキした。

終わると

「お願いです!今度いいものあげるから、

俺の分の感想文書いて下さい」って言われて

やっぱり断わる勇気が出なくて、引き受けてしまった。

(後日、埴輪型の指サックをくれた。可愛いの見つけたからって……謎でしかない)



ボーリングは、空君は初心者だそうで、ガーターばかりだった。

むきになって、3回つきあわされた後も、もう一回やろうと言われて、

「……」ヘトヘトで答えられないでいた時、

誰かに声をかけられた。

「もしかして、クウ?」

「キャー!クウちゃんだ!」


「あっ!コウタと愛ちゃん。」


「お前、大きくなったなー」

「本当、クウちゃん別人みたい。最初わからなかったもん。でも、やっぱり可愛い!」


コウタ君と愛ちゃんは、空君の同窓生で、

卒業してからカップルになったそうだ。

ボーリングして、

お腹がすいたから、何か食べに行くところでバッタリ私達と会った。

一緒に行こうということになり、ハンバーガーショップへ行った。


2人は、空君の頭を撫でたり、ほっぺをつまんだり、犬を扱うみたいにしてたけど、

空君はされるがままで、嫌がった様子もなかったというか、嬉しそうだった。


中学の時は、空君は「クウちゃん」と呼ばれていて、身長も高くなく、モテたというより、可愛いマスコットとして、

みんなから愛されていたという話だった。

中学卒業後に身長がグングン伸びたらしい。



2人と別れた後、

「空君、高校入学後にキャラ変したの?」

「してないよ。みんなが勝手にイメージ作っちゃってるから、それに合わせてるだけ」


私もそう、見た目で、空君のイメージ作ってた。

コウタ君と愛ちゃんに会えて良かった。

昔の空君のこと知れて。

これからは、緊張しないで普通に話せると思う。



二学期になり、

修学旅行で山梨に来た。

そこでのカリキュラムの内容は


1日目、河口湖でボートに乗った。

空君は、ヘタッピでボートがその場でくるくる回って動けなくなり、みんなに笑われた。

仕方ないから

「私が漕ぐから!」と代わり、

山本ペアと途中で出会ったので

帰りは岸君と乗り場まで競争して戻り、私(達?)が勝った。




2日目、

富士急ハイランドで遊んだ後

お化け屋敷がカリキュラムの課題だった。


なるほど。

女子が怖がって男子にくっつくから

仲良くなるのにお化け屋敷はうってつけだ。

でも、私達の場合は……

空君の方が怖がって「うわっー」と私より沢山悲鳴をあげ、私は、両腕を捕まれ盾にされた。時々、怖さのあまり空君が後ろから抱きついてくるから、

怖いのと、ドキドキするのとで死ぬかと思った。


外に出ると岸君が

「怖かったけど、楽しかった~」と言っているのが聞こえた。


そんなふう言う彼氏は理想的だと思った。



修学旅行後の空君は、

お化け屋敷での様子を私に見られちゃたせいか、私の前では、どんどん素を見せる様になった。

無邪気で、子供ぽくて、可愛い。

見た目と全然違う。

可愛いと思ったら、どんどん可愛いく見えるようになった。

ボーリング場で会ったコウタ君、愛ちゃんの

気持ちがわかったかも。




クリスマスのカリキュラムは

イルミネーションを見に行くんだろうと

誰もが予想してたけど、

時間外だから、それはなくて

クリスマスケーキコンクールが行われた。

私達は、(実は可愛いものが大好きな)空君が

デザインした雪だるまケーキを作って、

インスタ映え賞をもらった。





三学期になると

カリキュラムは最終段階となり

自分達で決めて良い郊外学習(=デート)二回

他は、トイレ君達が受けていたモラルとか、大人の不倫の成れの果て等の座学、総まとめ的なアンケートを書く時間だった。


空君の希望で

一回は人気のラーメンを食べに行き、

もう一回は

怖がりなのに『バイオハ○ード』の映画を

どーしても観たいと言うので付き合った。

結果

腕を組まれたり、くっついてきたりされ、

私は再び二重の恐怖を体験させられたのだった。



カリキュラムのお陰で

クラスのみんなは仲良くなった。

山本さんとも仲良くなり、『綾さん』『ミミちゃん』と呼び合うように、なれた。


ペアが解消されるタイミングで、

カップルになったペアも沢山いた。

でも、

私達も、綾さん達も

カップルになるまでには進展していなかった。




三年になった始業式、

綾さんの髪が茶髪カ~ルになっていて

ビックした。

可愛くなってる!

恋してるよね?見ててわかるよ。



ペアがなくなった事で

みんな解放感を味わった。

ちょっぴり淋しい気もする……

10月位までにカップルになれば、

成績に加点してもらえるけど、

誰も、もうあまりそんなことは、

気にしなくなっていた。



私、空君、綾さん、岸君は

4人で一緒にいることが増え、楽しい時間を過ごした。

カップルになるより、今はこの時間を大事に

したいと思えた。

青春を謳歌しているみたいで。

多分他の3人も。

それぞれの想いを胸に秘めながら……




私だけしか知らなかった可愛い空君は、

クールなキャラが崩壊して、

離れていった女子もいるけど

新たな女子ファンを獲得した。

一緒にいることが、増えたことで、

岸君と仲良くなると

岸君にまとわりつくようになって、

イチャついた。優しいからね、岸君。

でも、少し嫉妬しちゃう……



その後は、

励まし合いながら、

受験に取り組み、頑張った。

結果

皆、無事大学に合格出来た。




学校へ合格の報告をしに行くと、

しばらくぶりに

偶然、岸君に会った。

髪が黒くなって、印象が前と全然違ってみえた。

真面目そうな優等生タイプに見える。

話を聞いたところ、中学生の時そんな風に思われて嫌だったから、高校に入学する前に

茶髪にしたそう。

元は、綾さんと似たタイプだったんだ……

だから……

納得できちゃったかも。


「あのさ、3月後半のエムディアのライブチケットが当選したんたけど、一緒に行かない?」と岸君に誘われた。

綾さんに悪いかなと思ったけど、

それとこれとは別のこと、譲れない。

「当たったなんて凄~い。私ハズレてがっかりしてたんだ。誘ってくれて有難う!嬉しい!」


やったー!!



卒業式が終わって

空君とペアだった記念に、2人で会うことになった。お店に入り、オーダーしたカフェラテがきた後


「ミミに伝えなきゃならない事があるんだ」と空君が言った。

「何?」

「前に『俺の事好きになるなよ』って言ったじゃん?あれ、取り消すよ!」

「ふ~ん」

「えっ!リアクション薄」

「だって今更言われてもだし、空君の怖い女子ファンから守る為に言ったんだと思ったんだけど……」

「まぁ、それもあったかも……

ねぇ、ねぇそれで本当のところ、どう思ってるの?俺の事」と子供みたいに訊いてきた。

「う~ん……私、空君の事だ~い好きだよ!可愛いからずっと仲良くしたい!そういう空君は、どう思ってるの?私の事」

「何かその言い方、違うんだけどなぁ……

俺もミミが好きだよ!たくましくて、頼れるし……でも、ゴメン。付き合うとかは出来ないんだ」

「あっそ」

「『あっそ』って、それだけ?……まぁいいや、想定内ってことで……」



「実は、伝えたい事、もう一つあるんだ……

行くつもりだった大学は止めて、

通信制の大学行くことにしたんだ」

「どーして?何かの事情で?」

「うん……実は、スカウトされて、アイドルやることになった」

「嘘、すご~い!でも、空君にピッタリだとと思うよ!既にオーラ半端ないし。

ファンクラブとか出来たら、絶対私を第1号にして!お願い。ずっーと応援するから!」

「わかった。頑張るよ!」

ガンバレ!




楽しみにしていたライブへ岸君と行った。

最高に盛り上がった。

興奮さめやらない私達は

カラオケでエムディアの歌を歌って、

余韻に浸ることにした。


曲の合間に、

「空君と付き合う事になったの?仲いいから……」

「ううん。付き合わないよ……」


「良かったぁ……じゃあ、もし良かったら、

俺とつきあってくれない?」


「えっ?でも、綾さんは?」


「この前、会った時

『ペアの時は、色々フォローしてくれて有難う。今迄敬遠してた音楽の魅力や色んな事を沢山教えてもらって、本当に感謝してる。

私の世界が広がって楽しくなった。

岸君の事、好きになったけど、今は大丈夫だから、返事はしなくていいよ。

伝えたかっただけだから……

それに、近くにいること多かったから、気づいてた……岸君の視線の先にいた人』って言われた。

ミミちゃんのことは

最初は、どこかぎこちなくて、緊張気味で心配してて……そのうち自然体でいる君が可愛いくて好きになった」


嘘みたい、どーしよう


「嬉しい!!ありのままの私を好きになってもらえて。

私も岸君のこと、ずっと前から好きだった。

綾さんに優しく接する岸君を見てて、

いいなーって、いつも思ってたの」



こうして、私の恋が始まった!!




それから、暫くして学校から封書が届いた。

「大変遅くなり申し訳ありません。

三浦未来ー岸翔亜

漆間空ー山本綾

今更ですが、ペアが判明しましたので、ご報告致します」






まじ?恐るべしAI。






『次の日曜日、どこ行きたい?』

「えっーとね、図書館!」

『えっ?……いいよ、そうしよう!』





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