【マミー編】私は暑い~♪

 寝言の爆笑エピソードって、よくありますよね~。

 ではここで、忘れようとしても忘れられない我がマミーの寝言エピソードを一つ。



 あれは、わしが中学生の冬。

 家の二階に和室が二部屋あり、その間を仕切るふすまを取り払い、大きな一部屋として使っておりました。

 小さい方の部屋が兄弟の勉強スペース。

 大きい方の部屋が、お布団川の字の寝室スペースとなっておったのでござる。



 その夜わしは、来たる期末テストに向けて勉強を黙々と進めておりました。

 何時ごろだったかは覚えてないですが、ふと後ろから物音が。

 振り向くと、勉強机に一番近い位置で寝ていたマミーが薄目を開いていたのです。



「ああ、ごめん。眩しかったかな?」



 普通にそう訊ねるわし。

 しかし、マミーはぼーっとしたまま答えない。



 ああ、起きたわけじゃないのか。

 寝ぼけてるだけね。



 普通にそう思って、じゃあ無視して勉強に戻ろうとした、その時です。



 バッ



 マミーが突然、かぶっていたかけ布団をぶん投げたのです。

 投げられた布団はしわの一つもなく、整えたような綺麗さで、隣に眠っていたチビの上に着地しました。



 真冬のかけ布団ですよ?

 かけ布団の下には、毛布もあったんですよ?

 その二枚組かけ布団が、あんなに綺麗に着地するってどういうこと?



 その時点で、わしの腹筋はすでに震えておりました。

 しかし、これでは終わりません。



「なんだ…? どうした…?」



 おそるおそる訊ねたわしを、やはりぼーっとした目で見つめるマミー。

 何をするのかと思って見ていると、マミーはふと足を上げ、履いていた着圧ソックスに手をかけました。

 ソックスをぐいっと足首辺りまで下げるマミー。

 そして、こう歌い始めるのです。



「私は暑い~♪」



 そのワンフレーズを歌ったかと思いきや、次の瞬間には爆睡。

 こてん、と。

 足と手が布団の上に落ちていきました。



 だからなんだ!?

 暑いなら脱げ!

 なんでそんな中途半端なところで寝落ちする!?

 つーか、急に歌うな!

 ツッコミが追いつかんわ!!



 とりあえず、あの日のマミーに言いたい。

 みんな寝てるから、爆笑するにできなくて悶えたわしの腹筋と、三十分くらい溶けた勉強時間を返せ(笑)




<余談>


 マミーが自分の隣に、綺麗にかけ布団をぶっ飛ばした件。

 あの現象、過去に何度もあったそうです。

 翌日、わしから一連の出来事を聞いたマミーは……



「あれ、自分でやってたんだ! ずっとお化けがやったんだと思ってた!! ありがとう! 長年の謎が解けた!!」



 と、大層喜んでおりました。



 寝ている人からお布団を剥いで、隣に綺麗に敷き直していくお化け…

 そんなお化けなら、会ってみたいですわね(笑)



 ちなみに、マミーがこれまで聞いた中で一番衝撃だったのは、マミーの知り合いが両手を空に向けながら、「男、男、男ーっ!!」と寝言で叫んでいたことだそうです。



 それはそれで、確かに衝撃。

 一体、どんな夢を見ていたんだろう…

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