第6話 ゆき

 いつもの公園と変わらないはずの光景が今日はなんだかキラキラしているように見えた。明らかにさっきまでの俺と何かが変わり始めているのがわかった。とても心が穏やかになったと思う。俺は公園のブランコで今日の出来事を振り返っていた。すると、

 「れんとくーん!こっちこっち~!」

 と遠くから話しかけてきたのはなっちゃんだった。そのままなっちゃんはこっちに向かって走ってきた。

 「はあはあ、れんと君ってここら辺に住んでるの?」

 「うん、そうだよ。なっちゃんもここらへんなんだ。初めて知ったよ。」

 と下を見ると白い猫がいた。俺はもしやと思い傷を確認して、息をのんだ。

 (なっちゃんとこの猫だったんだ、、、。)

 「その猫、なっちゃんが飼ってるの?」

 「うん、ゆきちゃんっていうんだ。小さい時から一緒にいるの。ゆきちゃんは小さい時にけがをして誰かに助けてもらって瀕死の状態で動物病院に運ばれたんだって。そして猫を欲しがっていた私にママが三歳の誕生日プレゼントで猫を飼ってもいいってことになって見つけたのが、動物病院で見つけたこの子の里親募集の紙。あんまりその時の事は覚えてないけど、私はずっとその張り紙の前から動かなかったみたい。それでね、

 『この子、ゆきちゃん。ゆきちゃんにする!なっちゃん決めた。』

 って、もう名前決めちゃってね。そんな事があってゆきちゃんは我が家に来ることになったんだよ。」

 「そうだったんだ。ゆきちゃん助かってほんとよかったね!抱っこしてもいい?」

 「もちろん!れんと君、動物苦手じゃなかったっけ?」

 「ありがと!今の俺はこれまでの俺とは一味違うんだ!」

 俺は、ゆきちゃんを抱っこしてわたげに向かってなっちゃには聞こえない声で

 「わたげ。意外とはやく会えたね。幸せそうでよかった。」

 と言ったら、ゆきちゃんというかわたげは「みゃあ」と俺の目を見て鳴いた。俺は、鳴き声だけでも、もう俺にはわたげが言いたいことがなんとなくわかる気がした。

 俺は家に帰ってまず、お母さんに

 「あの時、わたげを助けてくれてありがとう。今日わたげに会ったんだ。わたげもお母さんに感謝してるって。」

 「あーそんなこともあったわね。今日わたげちゃんに会ったの?わたげちゃんと話したの?」

 「うん!動物世界の森でいろいろお話してきたよ。わたげ今同じクラスのなっちゃんとこで飼われているみたいなんだ。それで、今日クラスで鳥を飼うことが決まってね、なっちゃんと飼育係したいねって話になったの!」

 (この子、こんなに動物好きだったかしら。今日わたげちゃんに会ったって言っているし、何かあったのかしら。) 

「れんと、なっちゃんと同じクラスだったんだね。なっちゃんのお母さんとは昔からの知り合いでね。あの時わたげを引き取りたいって電話してくれて、知り合いだったから安心してわたげちゃんを渡すことができたのよ。この近くに住んでるんでしょ?れんともなっちゃんと仲良くしてね。」

その翌日、クラスでは飼育係を決める事になった。そこで俺となっちゃんが立候補して二人で飼育係をすることになった。その時クラスメイトはざわめいたが俺はもうするって決めたんだ。俺は変わるんだ。

俺は、その日からなっちゃんに一から鳥の事について学んだ。もう、今ではすっかり鳥のお世話にも慣れて鳥たちとも仲良くなれたみたいだ。あの日から動物の事に興味を持ち始めて、学校の図書館で動物に関する本を借りてみたり、インターネットで調べてみたりしている。そのおかげか今の僕のあだ名は「動物博士」に変わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たんぽぽ @Natsu1427

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ