第2話 れさ

すると、いきなり、真っ白の猫が現れた。野良猫にしては毛並みが整っていてきれいだと思った。俺は猫に対して言った。

「おい、こっち来るなよ。『猫インフルエンザ』もあるかもしれないだろ!あっち行けよ!」

そしたら猫は「にゃあ」となき、近くの公園に向かって歩き始めた。いつもだったら何とも思わないが、俺はこの猫が言いたいことがなぜかわかる気がした。俺の身体は無意識に猫が進む方向に走り出していた。ついていくときも猫は時々後ろを向いて俺がちゃんとついてきているか確認しているように思えた。猫は公園の草陰に入りそこにある小さなトンネルに入っていった。(こんなところにトンネルなんてあったかな。)と不思議に思いながらもトンネルに入っていった。そのトンネルはおもったより短くすぐに外につながった。

 ふと気が付くとそこはさっきの公園がなく木が周りにびっしりと生えていた。下を見るとさっきの猫がいた。その猫が

「ようこそ私たちの世界へ。びっくりしないでね!この世界は動物も人間と同じ言葉でしゃべれるようになるんだ。分かった?ちょっとついてきて」

 「おい、ふざけんなよちょっと待てよ!」

俺の言葉には反応せず、猫は足取り軽く森の中を進み始めた。俺はここで迷子になるのが怖かった。しょうがなく猫についていくことにした。すると突然猫が止まった。俺も止まる。

「おい、どういうことか説明しろよ。ここはどこなんだ?」

「ここは、人間の世界とはまた違っていろいろな動物が集まってくるところなんだ。でもいろいろな事情を持った子が集まってくるんだよ」

「お前はなんで俺の前に現れたんだよ。なんか俺に用なの?」

「君は動物が嫌いなんだよね」

「そうだよ。大っ嫌い。仲良くなれないし、見てるとイライラする。」

「そんな君に、ぜひ話がしたいっていう友達がいるんだ。今日はその話を聞いてもらいたくて君を呼んだんだ。」

「やだよ、そんなの。俺は動物が嫌いって言ったろ!もう、帰る。帰り道教えろ!」

「そこを何とか、私たち本当に困ってるんだ。話を聞いてみるだけでいいから。ね?」

俺は猫のしつこさに負け、話を聞くだけならいいか。と思いその友達の話を聞くことにした。

 その木々の先にいたのは、動物園でも見たことない動物だった。

「おーい、おまたせ~。連れてきたよ!」

と猫は叫ぶ。俺は猫にこっそり聞いた。

「シロクマときつねは分かるんだけど、あの…オレンジの名前なんて言うの?」

「あーあれはレッサーパンダっていうんだよ!知らなかった?」

俺はコクっとうなずいてその動物たちのもとへ急いだ。

 レッサーパンダがさっと前に来て

「僕はレッサーパンダの『れさ』って言うんだ、よろしくね」

「俺はれんと。よろしくな。お前ら困ってるんだろ?いったい何に困ってるんだよ。」

「うん、そうなんだ。れんと君は絶滅危惧種って知ってる?絶滅危惧種っていうのは世界的に数が減っていてこのままじゃ世界から絶滅してしまう恐れがある種の事をいうんだ。実は僕たちレッサーパンダも絶滅危惧種なんだ。世界に約一万頭しかいないって言われてるんだ。年々数が減ってきていて本当にピンチなんだ。」

俺はびっくりして身を乗り出して

「なんでそんなに減ってしまったんだ?」

と聞いた。

「レッサーパンダは木があるところを住処にして天敵に見つからないようにしてるんだ。でもね、人間が大きな機械で僕たちの住処を切り倒して持って行っちゃうんだ。だから僕たちにはおうちがないし、隠れるところがないから天敵に見つかりやすくなっちゃうし、食べ物も手に入らない。こうやって僕の友達は何匹も死んじゃったの。だから、僕たちレッサーパンダはこんなにも減ってしまってるんだよ。僕はいつまで生きていけるのかな。」

さっきまで明るかったれさが最後の言葉をきに、泣き始めてしまった。すると猫が次はこっちに行きましょう。ときつねのところに連れて行ってくれた。

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