ジロミ

Take_Mikuru

ジロミ

細く、

かといって程よく膨らみのある美脚につられ、

引き摺り込まれるように電車内に駆け込んだ。


キレイな黒髪に柔らかそうな生地のトップス、ブラックレザーに包み込まれた腰回り、そしてあの圧倒的な美脚。それを見て性欲を掻き乱されない方が異常者なんじゃないかと思ってしまう程のいい女だ。近くでガン見し過ぎるのも問題であるため、少し距離のあるところから幾度もチラ見を繰り返し、その最高級の身体を味わい倒した。


それにしても、あの手のオンナとは一体いつ、いかなる状況で出会うのだろうか。俺の29年間では全くの皆無だ。訳のわからない何かに呪われているのかと思うほど縁がないのだ。だから29年間ジロ見を積み重ねてきた。そう、俺は電車内、あるいは町中、果ては道を歩いている時、ジロジロと、エロいい女を見つめてきたのだ。勃起CHINKOをぶら下げながら、いつかあれ程のいいオンナとセックスしてやると自分に言い聞かせながら生きてきたんだ。でもその機会は一向に訪れず、今後も訪れないだろうと俺は踏んでいる。俺みたいな変態チンコ野郎にそんな機会は訪れないだろう。風俗でも行かない限り無理だろう。まぁ、ぶっちゃけ風俗でも十分かもしれない。なぜなら結局、詰まるところ、最高にエロいい女を抱いていることには変わりないからだ。俺は風俗に関してはベテランだ。右に出るものがいねぇ。だから分かる。俺は風俗でも十分過ぎるくらい満足できる。じゃあ何でこんなに引っかかるんだ?なんでこんなにエロいい女との出会いの少なさに胸を掻きむしられるのだろう。それも簡単、いつもアイツらの隣にいるのが屑っタレタCHARA男かオッカネー兄ちゃんだからだ。俺はこれに納得がいっていない。もしかしたら、CHARA男もオッカ兄ちゃんも想像を絶するエリートなのかもしれない。普段は医者あるいは弁護士として働き、週末だけCHARA男あるいはオッカ兄になっちゃってま〜す、みたいなfunny guysなのかもしれない。あるいは、最高にエロイイ女たちの方が想像を絶する程クズガールズなのかもしれない。まぁ、どちらにせよ、忌々しいものは忌々しい。死んじまえよ!お二方。とっとと死んじまえよ!


あ〜、

俺みたいなブサメンにもチャンスがあったらなぁ〜


って、


これこそチャンスなんじゃね!?


イマ、

このmoment、

俺とエロいい女は同じ車両内にいる。


そう、

ミッシツに。


同じミッシツにいるのだから、

彼女が俺から逃げられることはないだろう。

ミッシツにいるんだからね。


それとなくそちらの方を向くと、

彼女は相変わらず手すりに捕まりながらスマホを弄っている。片方の脚を少し折り曲げており、それが彼女のやわらか〜い太ももをこの上なく強調していて、俺はすぐさま己のチクビを適度にとんがらせた爪で弄くり回したい衝動に駆られた。


が、

ここは持ち堪え、

彼女のそばまで歩いてみることにした。


意外と車内は混んでおり、

彼女の後ろにたどり着くまでに6回ほど心もとない「すみません」を挟むことになってしまった。オスとして見られたい俺としてこれは大きな痛手だ。彼女のような最高級girlからしたら、弱々しい、しかもそれなりにうわずった「すみません」を6回も発する男に近寄られたくはないだろう。もっとハリのあるバリトンvoiceで、やらしく、耳元で囁かれたいであろう。そんな光景を想像しているだけでも俺のチクビは「ハヤク、ハヤク弄くり回してぇ〜!」と勝手に疼きやがってくる。

彼女の後ろに来ると、なんてイイ匂いなんだ。俺はもともと女の香水の匂いが大好きだ。一生嗅いでいたいくらいあの匂いが大好きなのだ。そしてこれまで意識的に嗅いできたあまたの香水の中でも、彼女の香水はピカイチだ。すっと鼻に入り込み、男の本能をそっと撫で上げてくる。鼻しか刺激されていないはずなのに、胸までザワめいてくる。そのまま襲いかかってやりたい気分だ。嗅げば嗅ぐほど、彼女の脚を見れば見るほど、内なる獣が目を覚まし、今か今かと飛び出すタイミングを伺っている。




と、




「やめてください」



手元に肌触りの良い温もりを感じる。

ゆっくりと手元を見ると、彼女が俺の左手首をガッシリと掴んでいる。


ドカン!


CHINKO IS STAND UP!


俺は彼女に見つからないよう、頑張って右手でCHINKOを隠した。

でもこれがあかんかった。

彼女は真っすぐ俺を見ながら大きな声で言った。


「この人痴漢です!さっきから私の脚を触ってくるんです!」


俺と彼女の周りで乗客たちがざわめき始めた。


「今も片手で股間を弄り倒してます!」


「おいテメェ!やっていいことと悪いことがあんぞ!」


ガタイの良い若者に俺は思いっきり肩を掴まれた。


「僕が抑えておくので、もう離して大丈夫ですよ」


若者が彼女に勇ましく言うと、彼女はそっと頷いて俺から手を離した。

せっかくのスキンシップが台無しになり、彼女の温もりの残りを必死に手首に記憶させようとしていると、彼女が俺の前から若者の横に移動してしまった。


「そろそろ次の駅なので、着いたらすぐに駅員さんに言いに行きましょう」


若者がまた勇ましく言う。


「はい!」


と彼女は両手を両頬に当てながら頷いた。


ふん、

どうしてこうなっちまうんだろう。

確かにコイツはCHARA男でもオッカ兄でもないけれど、またもや最高級のエロいい女を横取りされてしまった。

しかも今回は目の前でだ。

なんってついてないんだ。

手首を握ってもらうことは出来たが、あまりの時間の短さに、もう既に手首が彼女の温もりを忘れてしまっているではないか。


そうこうしているうちに電車が次の駅に到着した。

俺は若者にとてつもない力で掴まれながら、今では完全にしぼんでしまっているchinkoをぶら下げて駅員へと連れていかれた。

前を歩く彼女を見ながら、心底悔しい思いが体中に広がっていった。


触りたい!!!


本当はめちゃくちゃ触りたい!!!



って、


そう、


俺は触ってない。


指一本触れていない。


手首を掴まれながら見つめられたことで頭が真っ白になってしまい、

されるがままにここまで来てしまったのだ。


目の前の汗臭い駅員さんが油でギトギトした顔で俺を覗き込んでいる。


「で、やったんだね、彼女の脚を触った?そうでしょ?」


痴漢は否定しても意味がない。

俺の今までのジロ見が走馬灯のように脳を駆け巡る。

俺のジロ見は遂に女に触られた感覚までもを与えられるまでになったらしい。


ああ、

ジロ見なんかするもんじゃないな。

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