初級モード 2
さて、次に俺は探偵による「謎解きパート」を組み立てることにした。
ミステリは、これが一番大事だろう。
謎解きこそがミステリの醍醐味だ。
俺は、提示されたトリックの中から「双子トリック」を選択してみた。
双子の片方がアリバイを作り、もう片方が実行犯だ。
探偵は犯人にこのように指摘して、犯行を暴く。
「あなたは、ひょっとしたら、双子なのではありませんか?」
読者は、犯人が双子だとは思っていないので、この意外な結末に驚くはず!
作品の評価点数も高いのでは……
俺は期待した。
しかし、AIは極端に低い点数を付けてきた。
減点理由が、なんと2つも表示されている。
「ノックスの十戒の1つ、『双子や変装は、あらかじめ読者に知らせなければならない。』これに違反しています。」
「ノックスの十戒の1つ、『探偵は、偶然や第六感で事件を解決してはならない。』これに違反しています。」
そうなのか……
探偵が適当に、
「ひょっとしたら双子なのでは?」
と指摘して偶然当たってしまうのは、勘で真相を当てたのと同じことになってしまい、ダメだということか。
仕方ないので俺は、物語の中盤で、犯人が双子であることが分かるような伏線を入れることにした。
意外なところで目撃されている。
さっき会ったばかりのはずなのに会話がかみ合わない。
数分前と服装や外見が微妙に違っている……などの要素を追加で入れていった。
すると、評価の点数が回復してきた。
犯人は実は双子なのでは? と読者に思わせるヒントがないといけないんだな。ふむふむ、勉強になった。
しかし、作っているうちに双子トリックでは新鮮さがないように思えてきた。
そこで、俺は犯人の設定を変えてみることにした。
小説ってのは、登場人物の個性が大事だよな。
やっぱり、キャラが立っていないと。
俺は犯人役に、「腕利きのスナイパー」を設定してみた。
犯行は長距離からの狙撃。
被害者がほんの一瞬、窓に姿を現した瞬間に犯人が撃つ。
射撃のプロなので、見事命中させる。
トリックとして、いい感じに成り立っているように思えた。
このように構成して、AIに判定させてみた。
が、またも低得点……
理由は、こうだった。
「ヴァン・ダインの二十則の1つ、『犯人は犯行のプロであってはならない。』これに違反しています。」
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