U Hole【アンダーホール】

@noukouu-roncha

Prologue

 ---化学が摩訶不思議《オカルト》終わらせ、魔導がオカルトを蘇らせた---

                               著者不明


 西暦2050年の春、俺は戦場に居た。

昔の学者は第四次世界大戦は石と棍棒である、なんて言葉を残したらしいが、

現実は、でしかも戦地は異なる世界なんだから、もっと古い人が

残した事実は小説よりなんとやら、って言葉の方が正しかった。

 15年前に終わった第三次世界大戦によって飛躍的、加速度的に進歩した遺伝子工学やマイクロマシン技術を中心にした人体に様々なオプション追加機能を組込み常識外の筋力、脅威的な自己回復能力、スパコン並の情報処理能力を搭載した身体を20世紀の特撮ヒーローもののような超出力と防護性能を持つエクステリアと呼ばれる外殻に身を包んだインサートソルジャーが戦場の花形になったことで、銃はドローンの武器となり、最も効果的な武器は高出力の膂力で振り回す剣や鉈、槍といった最新技術で造られた旧時代の武器へと前衛的な逆行を図った。

そうした不思議な歴史を刻んだ人類が、ようやっと大戦禍から復興をした2年前の

西暦2048年事実はより奇妙を運んでくる。


 2000年代初頭から世界各地で発生していた突如として地面にまるででかい口の様な大穴が開く事象は、当時地盤沈下や地下水の枯渇によるものと言われていたが、2048年の秋、それは間違いであったという事を世界は理解する。

始まりが何処だったのかは定かではないが、各地で森林の異常成長が観測され始め、新種の動植物が発見される事例が、例年の20倍という異常事態が報告され、世界が

ざわめき始めると、原因不明のパンデミックが続き、混乱が広がる中で、遂に事実はが運んできた奇妙は開花した。

地球そのものが鳴動しているような最大震度観測不可の超巨大地震から一夜明けると5大陸に空いた大穴から、空想上の動植物が溢れ、各地を侵撃。

 空にはドローンですら追いつけない高機動、3次元軌道で自由に飛ぶ羽根の生えた巨大な爬虫類が、次々と戦闘機やドローンを翻弄、破壊していき、海には20階建てのビル程ありそうな甲殻類が戦艦や空母を触手で叩き折り、手足の生えた魚や両生類のような人型は、逃げ惑う船員に襲い掛かり、大地には人型ではあるが単眼の巨体が自由に闊歩し、その足元にはあらゆる空想上の動物等が破壊された街から逃げ惑う市民らの血で、口元を鮮やかにしていた。

まさに、奇妙という名の地獄が地球のあちこちで満開していた。

 

 各国は早急に軍を再編、国やイデオロギーを超えた連携を見せる。

皮肉にも、この地獄が人類に世界平和を齎した。

地獄に仏ではないが、夥しい同胞の血で研磨され続けた現代兵器の数々は怪物等を

滅するだけの効果を持っていた。

しかし、ミサイル等の誘導兵器の命中率は限りなく低く、それよりも大口径の機銃や

インサートソルジャーの持つ大型の近接武器が最も効果的であった。

後に一次蝟集と呼ばれるそれは1年かけて収束を見せ始め、そして2049年の春大穴の奥に異なる世界がある事が発見され、人類は更なる泥沼へと邁進した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る