第11話

1度だけ、受験のために高校に出向いたことはあるが、それっきりだったので道を覚えているか不安だ。


今の俺は周りをキョロキョロしているから、見るからに田舎者というのも丸出しにして歩いていることだろう。


「あ、あのっ!」


どこかで女の子の声が聞こえる。あいにく、この土地に女の子の友達はおろか、普通の友達もいない。


「待ってください!スマートフォン落としましたよ!」


あー、スマホって俺が持ってるやつか。使い方があんまり分からないから意識してないんだよなぁ。連絡用って聞いたし、沙和ちゃんから連絡来てないか、確認しとくか。


ん?あれ。落としたのって俺!?


「すみません……」


後ろを振り返って頭を下げる。スマホを渡している女の子に目を向けると、俺と同じ学校の制服を着ていた。というか金髪の可愛い女の子どこかで……。


「あ、マンションに入れなかった人ですか?」


あ、あのマンションに導いてくれた人だ。それにしても覚え方が……。オドオドしながらスマートフォンを手渡してくれた。


「その人で合ってると思う。同じ学校だったんだね」


リボンを見たら青色だったので、俺と同学年ということを理解した上で砕けた口調で話しかける。


金髪の女の子は緊張気味の笑顔で話す。


「一緒に行きましょうか」


そんなありがたい提案を向こうからしてくれる。同じところに向かうのだから、普通と言えばそうだが男と並んで歩くなんて嫌だろう。


まぁ、美少女と一緒に登校できる機会だから楽しもうじゃないか!決して浮気ではないぞ。これは仕方ないことだ。


「え!?あの島から来たんですか!?」


話すつもりは無かったのだが、調子に乗って話してしまった。隠そうとは思っていたけど、バレたからって、まぁいいだろう。


「え、じゃあ一学年に10人くらいしかいないって本当なんですか!」


予想以上に食いついてきた金髪の女の子。俺の自虐的地元ネタをしながら、学校へと向かった。金髪の女の子が高校への道を知っていたので、安心して向かうことが出来た。


♣♣

教室に入ると、俺は端っこの真ん中の席だった。やはり俺は主人公席をとれないんだなぁと思う。


席の後ろには眼鏡をかけた男の子がいた。顔は整っていて、初対面の俺でも好印象をもつ好青年という言葉が似合うやつだった。


「これからよろしく」

「はぁぁああ…。前の席は男かよ。それにイケメンかよ。」


出会ってそうそうに俺の顔を見て嫌そうな顔をした。好青年なんかじゃなくて嫌なやつだ。


「まぁ、いいや。よろしく。俺の名前は七瀬晃ななせこう。晃ってよんでくれ」

「俺は夏目翔。よろしく頼む」


適当な挨拶を交わす。そして晃という少年はニヤニヤしながら聞いてくるのだった。


「お前、彼女いるんだろ?いてくれ、頼む」


祈るように手を合わせる晃に良いかどうか分からないが真実だけは話しておく。


「彼女っていうか、好きな人がいる。片想いだけどな。何年間も」

「そうか、そうか!それはいいことだ。ライバルは少ない方がいいからな。お前のことを勘違いしてたよ。お前は良い奴だ」


そう言って、上機嫌に俺の肩を叩いた。まぁ、俺への評価が上がったのならそれでいいが。そんなことを思っていると、俺の席の近くに見知った顔の人が座った。


「おい、お前の前の席の子、めちゃくちゃ可愛いじゃんかよ!いいなぁ」


そんなことを言う晃。ふんわりとした金髪の女の子。さっきまで会っていたというか、登校していた子。その子はにんまりと笑っていう。


「あ、同じクラスでしたね。中尾です。これからよろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げる中尾さん。後ろでは禍々しいオーラがでている。また俺は晃のヘイトをかったらしい。


♣♣

星が欲しい。


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