第47話 一般常識に関しましては余裕ですわ~!

もちろん僕が知っている学問で庶民学なんてものはない。

庶民学ってなんだよ、庶民は学ぶような生物じゃないって

「ではもしかして、普通の方々というのは庶民学だけでなくて、紳士学や淑女学も学んでいらっしゃらないのですか?」

「もちろん学ばないよ、学んでも使う場所がないよ」

「そうなのですね、私ってもしかして啓さんからしたら世間知らずですの?」

「うーん、いや、えーっと」

上手い言葉選びが思いつかない、心の声に正直になれば世間知らずどころか幼稚園児レベルだと思っているが、それを本人を目の前にして言うのはいかがなものだろうか。


「気を使ってくださらなくて結構ですわ! 私啓さんになら例え何を言われてもしっかりと受け止めますわ!」

「そこまでひどいこと言うつもりはないけど……。まあ世間に関してはあまり明るくない方なのかと、だから一緒に普通というものについて学んでもらえると嬉しい」

「うう、やっぱり私は世間知らずでしたの、啓さんや皆様にしっかりと一人前と認めてもらえるように頑張りますわ!」

「うん、一緒に頑張ろう」

彼女の考えていることやテンション感が良く分からないが、とにかくやる気になってもらえたみたいで嬉しい。


「そういえば凉坂さんがお嬢様に囲まれて育って、常識外れになってのは分かったけど、美月も同じ学校出身なんだよね?」

「はい、私たち一心同体といっても過言ではありませんわ! 私のいる所には常に美月がいて、美月がいる所には常に私がいますわ!」

なるほど、にこいちという奴だろうか、それにしては割と離れている印象があるが……。まあそこは気にしないことにしよう。


「じゃあ雑談はこの程度にしておいて、常識のお勉強続けましょうか」

「はい、分かりましたわ! よろしくお願いしますですわ!」


~~~


というような形で文言でなんとなく彼女に一般常識とは何か伝えていき、無事一日目の勉強は終わらなかった。

無事に終わらなかった。


僕が想像していたよりも彼女の常識はあまりにも一般常識とかけ離れすぎていたのだ。

おかしい、たぶん彼女は僕と違う世界から来てる。僕の知っている世界の洋服やアクセサリーは使い捨てじゃないし、旅行のたびにホテルじゃなくて別荘を買うなんて話は知らない。


やっぱり彼女は異世界から来たんだ。それならば美しい美貌の理不尽なまでもの不思議なパワーも納得ができる。

というか異世界からきた以外で説明が出来ない。僕の十数年間を使って作ってきた人生観を一日ちょっとで完全に破壊するのを辞めてほしい。


彼女の教育は難航を極める、どうしようかと項垂れていると、携帯電話がピーピーとなりだした。

液晶パネルの上に浮かび上がった朝人という名前を見て、今抱えている問題が多いことを思い出さされる。



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