第26話 そんな言い方じゃ、教えられませんわ!
「分かりません。教えてください」
結論の出ている事でも確認したいことはある。僕はやはり嘘つきでもいい、最終確認というのは死ぬほど大切だ。
「啓様、それが人にものを頼むときの態度ですか? 今まで何年間も生きてきてそんな事も分からないんですか?」
美月は圧倒的力を分からせるようにクールな表情を保ちながら、そんな返事をした。
確かに人に、特に女性にものを頼むときの態度とはちょっと違ったかもしれない。ここは素直に謝って適切な態度でもう一度頼むことにしよう。
「すみませんでした、美月様。よろしければこのわたくしめに是非ご年齢を教えてくだされば幸いです」
頭を下げる角度を意識しながら今自分が出来る最大限の敬意を払いながらお願いをした。これなら間違いないはずだ。
次の瞬間、パァン! と重い音が鳴り軽すぎる感覚が下げた頭に襲い掛かる。
「啓様、だからそれが人にものを頼む態度ですか? あなたには失望しました。私本当に許せません、次同じような態度を取ったら今と同じように痛すぎる力で殴りますよ」
「美月、それはあんまりじゃないですの?」
「いいえ、彩様は黙っててください。これは私とそこのゴミカス啓様との話です」
「美月そうなのですね、ごめんなさい」
「いいえ、彩様は何も悪くないです、悪いのは本当に啓様だけです」
優しいお嬢様の慈悲も虚しく、美月はぶち切れモードを継続している。
どうすればいいんだ、叩かれた事は何も痛くなかったので大丈夫だが年齢確認はやはりしておきたい。ここまで知的好奇心を満たすものは初めてかもしれない。
「啓様本当に分からないんですか? 私と過ごしてもう結構な時間が経ちますのに何も分からないんですね」
めちゃくちゃ怒られてる。そっか、そうだよな結構な時間が経って……経って……経ってないよ。
今、頭の中から美月との思い出引き出したけど、時間絶対経ってないぞ。
だって、美月の事なんてドMってことくらいしか分からないし。いや、そういえば美月ってめちゃくちゃドMか。そうか、そういえばそっか。
「美月、年齢を教えろ」
「はい、分かりました。私は18歳の貴方と彩様だけの女です」
「後半の情報要らないから、でもありがとう」
「啓様、ツンデレモードはいらないので私には罵倒というご褒美を沢山ください」
「うん」
どうやら、答えはあっていたらしい。それでも彼女の年齢が聞き出せたことは良かった。
というか本当に年上なのか、より罵倒とか強く出るのやりにくいな。別にSでもMでもないけど兎にも角にもやりずらい。
「では、啓様に主人としての教育をもう一度出来たことなので帰りましょう。帰りも飛ばさせていただきます」
「安全運転でよろしくお願いします」
「美月お願いですわ!」
車に乗り込み、家へと帰る。
揺れもあってか、少し眠くなってくる。疲れからか車の後部座席のドアに寄りかかる。
「啓さん、眠そうですわね。寝てくださって大丈夫ですわよ、帰ったら起こしますわ」
優しい人の声を聞いて、指示に従って目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます