第4話 特別扱いの生徒たち


柚月が入学して2、3日が経った。


本日から本格的な授業が始まる。


新入生は学園に慣れるため、入学してから昨日まで上級生が食事の用意をしてくれていた。だがそれも昨日までの話し。



柚月は初めてクラスメイトと一緒に食堂内にある売店に来ていた。


ここは全寮制の学校だ。当然のように、そこには家族の気持ちのこもった手作りの弁当などない。


作ろうと思えば家庭科室を借りて作れるのだが。そんな生徒もちらほらといるらしい。自炊をしないと経済的には苦しくなる。



「やっとお昼だぁ!」

「あ〜っ腹減ったぁ……」



全寮制の学校では必然的に食事が楽しみになってくる。


4時限めも終わり、皆食堂にゾロゾロと集まっていた。


ちなみに菓子パンは早い者勝ちだ。


人気のあるモノは早々に売り切れてしまう。



「オレンジジュースください」



柚月がオレンジジュースに手を伸ばした。



しかし


「あっ、それはあちらに持っていくので…」

「…え……?」



思いもよらない売店のお姉さんの言葉に


「…あっち?」

「ほら。あちらよ」



彼女の指を示す方向には


窓際を陣取っている何人かの生徒の姿が見える。



棚の上にはまだオレンジジュースはたくさん置いてある。



だが、今から持っていくであろうそこに座っている人数は、ジュースの数よりも明らか少ない。



全員に持っていくとしても


「…数が、余りますよね?」

「いえ。全部持っていくんですよ」


お姉さんは全て丁寧にトレイに乗せている。


その他にも


サンドイッチやメロンパンなどの菓子パン類もいろいろと。



「ごめんなさいね。他のモノにしてくれる?」



ーーみんなが並んで買っているのに…なんであの人たちだけ?



「…特別扱い?」



そこに


「…あいつらF組だろう?」


すかさず、隣りに立っている中等部らしい男子生徒が言った。「相手がF組じゃ仕方ないって」

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