第41話デートの終わり

きゅうちゃんと手をつなぎ、街を歩く。

夏の夜、じっとりとした湿気と熱気。

加えて、繋いだ手からの骨張った指の感触。

全身女の子全開でキメているけど、細部は男のコなんだなと思う。

直線的な肩幅に、すらりとしたウエスト。平坦な胸板。

よく見たら異性なのに、なんで女の子に見えたんだろう。謎だ。

そして、私は根っからのレズビアンなのに、こうして男の子の恋人がいるのも、不思議な感じがする。

クィッと手を引かれて抱き寄せられた。

すっぽりと体が収まる。

甘いバニラの香り。

「きゅうちゃん、香水何使ってるの?すごくいい匂い」

「ジルのバニラ・ラストだよ。女の子って感じの香りでしょ?」

「うん」

「つきちゃんも香水つけよーよ。シャネルが言ってたじゃーん。『香水をつけないオンナに未来はない』って」

「でも、何をつけたらいいかわからなくて」

「香水っていろいろあるからね。自分のなりたいイメージに合わせるといいよ。それか、ボクのとおそろっちする?」

「え。いいの?」

「逆に、やなの?」

「嫌……じゃないけど、なんか」

「何?」

「照れるじゃん。オソロって」

私を抱きしめる腕の力が強くなる

「あー、可愛いなあ!つきちゃんは」

その流れでキスをする。

頬、おでこ、まぶたにキスの雨が降る。

顔中、口紅とグロスだらけでギトギトだが、気にしない。

私の頬に両手を添えて、おでことおでこをコツン、と当てて、目を閉じる。

マスクをとり、ムニムニときゅうちゃんの頰を揉んでみる。

柔らかい。

「もー、ファンデとチークが落ちちゃうよー」

「何を今更言ってんのよ。人の顔中ベタベタに口紅のあとをつけたやつが!」

「だってぇー」

一番星がきらめく空の下、ギュッと抱き合ってから、各々の家に帰った。



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LGBTQー逆転LOVERSー 夜人(らいと) @Leica_camera

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