第10話 宵闇

(ああ、真っ暗になっちゃった)


まだ、まだ、しゃべっていたい、

と思った。

でも終わりだ。


偶然、ここに来て良かった。


先輩が時計をちらちら見ている。


「あ、帰らないと、、

じゃ、先輩、、また」


「おう。

送っていくよ、

後ろのれ。」


バイク。

あ、先輩、彼女の家に行く途中だったのかな?


「大丈夫です、

先輩用事あるんですよね、

私はここでオッケーなんで。

また。


彼女のとこですか?これから、


遠いから

気をつけてです、。」


「乗れ、

うん、そう。

女のとこに。


送るよ。」


「いやいや、ほんと大丈夫です」


「まあ、いいから。


危ないから。

乗りな。」


先輩のバイクの後ろに乗せてもらう。

安全運転。


先輩は、今日、彼女さんの話をあまり

リアリティを込めて話さない。


初めて会った日は、

元カノの馴れ初めから別れまで話してくれたのに。


先輩は優しい人だった。


初めて会った時から

最後まで。


ずっと優しかったから


だから私の微妙な変化に

気づいてしまったのかもしれない。


この頃から先輩は、

彼女さんの話は、

私が話題をふっても、

遠い遠い話みたいに

解像度最低の話ぶりで

話した。


先輩は、

優しすぎた。

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