第3話 蛍

ゲームセンターは気晴らしになった。


一人で行ったのに、

みんな私を放っておいてくれるのに、

そこに、居ても、いい、って思えた。


ずっと眠れなかったのに、

その晩私は久々にぐっすり眠った。


眠れるなんて思ってなかった。


何でって、

踏んだり蹴ったりのSNSにプラスして、

明日は学校の登校日だったから。


竹野内千笑子、17歳。


私は、クラスのカースト上位の

グループの女子の一人に目をつけられ、

無視されたり、前を通ると睨みつけられたりしていた。あからさまに。


理由は、男子に異様に人気があったからだ。

クラスの男子だけにとどまらず、学年、他校の生徒、

バスで一緒になる学生など、

とにかく異常なほどの人気だった。


全ての告白は断ったが、

あちらこちらで色々な噂を立てられた。

その噂を信じた人間は何も関係なくても

私に石を投げる。


無視、罵詈雑言、噂、、うんざりだった。

 

何も悪いことをしてないし、

私は彼氏より勉強より、

ずっとずっと友達が欲しかった。


でも、私に友達なんてできるはずがなかった。


理不尽だった。

理不尽だったけど、ずっとこうだ。


きっとこれからも。


「学校についたら。

9時から11時までをやり過ごしたらいい。」



教室に入ると

仲西千景が立ち塞がって睨みつけている。


私は無視して挙動不審にならないように、

堂々とした感じで教室に入る。


仲西がコソコソとグループ内で話し始めた。

自分の事を言っているのかもしれない。


もう、挫けそうだ。。


先生が入ってきてホームルームが始まった。

9月になれば

またこんな景色が戻ってくる。


ほどなくして、登校日の日程が終わった。

教室の中はにぎやかになる。


私は一目散にバス停を目指す。

(みんなは、ご飯とか食べに行くんだろうな。)

と思ってしまい、かき消そうとしたが遅くて

涙ぐみそうになる。


バスが来た。乗り込む。


同じ制服を着た、見慣れない生徒が向かいに居る。

乗るのかな?初めて見た顔だけど、、


とんでもなくチャラく見える。

「(めっちゃチャラそう、、

目を合わせないようにしよう)」


そう思いながら窓の外に目をやる。


夏のキラキラした景色が流れていく。

地元が好きだ。


蛍は、生まれてからほとんど何も食べず、

恋をして死んでいくらしい。

自然はいつだって綺麗だ。

私に関係なく綺麗だ。


ああ、雨、、。


バスに乗り込んですぐ、雨が降り出した。


バスが到着し、傘もないので母に電話を掛ける。

しかし繋がらない。

雨宿りの本屋でもう少しこのままいるか、

と思っていると、

さっきバスに乗り込んだチャラ男が居た。



「おう、おめぇ、昨日ゲーセン一人でいなかったか?」

声をかけられてびっくりしてしまう。


しばらく考え、合点がいった。

「(ああ、昨日のUFOキャッチャーのチャラいカップルの人じゃん。

同じ学校だったんだ!)」


「どしたんだ?

何だおまえ、また一人なのか?

お母さん迎えこねーの?、、(´・ω・`)」


「あっ、、はい、、」


「傘もねんだろ?」


「、、。」


「うち、ちけーからうちで待つか?」


「え??」


「お前なんか、、困ってんだろ?(´・ω・`)」


いつもなら、男性には最大限の警戒をし、

気を持たせるような対応をしなかったか?

盗撮されていないか?などと思うのだが


この(´・ω・`)顔に拍子抜けした。


本気で、単純に心配してくれてるように思えた。

それに昨日のゲーセンで彼には彼女が居た。


他意はない。


猫でも拾うような気持ちなんだろう。

彼にとっては。


でも、あの時私は、

やっぱり寂しかったんだと思う。


友達が欲しいって思ってた。


「いいんですか?

じゃ、お邪魔させて下さい。」


「おう、来いよ(´・ω・`)」



吹き出しそうになる。


この人にとってはこれがこの人の普通なんだ。



この人の話が聞きたいと思った。

寂しい自分に声を掛けてくれた。

ほんとはそれが嬉しかったんだよな。

ずっとずっと寂しかったから。


彼と二人で雨の中をとぼとぼと歩き出した。

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