第2話

 わたしは朝、鏡の前に立ち長い髪を整えて、いつもの髪型のポニーテールにする。


 小さな髪飾りに薄紅色のリップ付ける。手首にアクセントのゴムバンドをして、目がキリっとして朝が来た事を実感する。


 教科書にノート、カロリーメイトに筆箱にその他と、学校に行くための支度も完璧だ。


「立華さん、ご飯ですよ」


 一階の台所から幾戸さんから声をかけられる。独り暮らしの長い幾戸さんは家事もつつがなくこなすのであった。もちらん、わたしより料理が美味しいので手伝う事はほとんど無くて、居候の身でありながらわたしの出番はないのであった。幾戸さんは優しげで身長も高いので彼女がいてもおかしくないのだが、


 いつも「僕には不釣り合いです」とはぐらかされてしまう。少し寂しげなその表情は追憶の恋でもしている様でもあった。わたしは朝の食卓に着くと「いただきます」と食べ始める。目玉焼きに味噌汁、野菜の漬物。とりあえず、白いご飯にカツオのふりかけをかけて食べ始め、シンプルな食事をガツガツと食べる。


 うん……?そうだわたしは眠り姫であった。


 一瞬、箸が止まり、幾戸さんの目を気にすると……。


「大丈夫です、ご飯が美味しいのは健康な証拠です」


 わたしに優しく幾戸さんは言葉をかける。そうなのかと、再びガツガツ食べると。幾戸さんは目を細めておかずに箸をのばす。


 「ごちそうさま」


 幾戸さんは「いえいえ」と先に食べ終わったわたしに言うとゆっくりと朝ご飯を食べ進める。


「あぁー、もうこんな時間だ、行ってきます」


 わたしは腕時計を確認すると鞄に荷物をまとめて家から飛び出す。


「おとと……」


 わたしは鏡の前に戻り。くるりと一回りして、もう一度見て最終チェックする。ふわりと浮かぶ制服のチェックのスカートは少しファショナブルでお気に入りである。


「よし」


 気合を入れ直して自分にゴーサインをする。

そして、わたしは幾戸さんに挨拶をして学校に向かうのであった。


「まあ、忙しいことだ……」


 取り残された幾戸さんはゆっくり箸を措き食器を片付け始める。

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