夏に辟易しながら、それでもまだ手放しきれない方に読んでほしい

池といえば、泳ぐ魚はそう、鯉、金魚、鮒。泥鰌やザリガニがいてもいいだろう。
そんな常識めいた刷り込みをどこ吹く風として飄々と、この池はある。
稀代な池はやはり、片手間では維持が難しいのだろう。夏の間、主人公はおそらくかなりの時間を傍らで過ごす。
私たちが水族館で魚を興味深く観察して通り過ぎるより、彼女の洞察は深く、しかし日常であるためか淡々としている。
魚たちを見ながら彼女は自らを思う。池を守りながら彼女は水面に自らを映したのだろうか。
彼女の心の揺れは水面を揺らす。
壊すことを彼女は恐れただろうか。それとも。
少しでも背中を押せるのなら、彼女に言いたい。それでもきっと、命は強いから大丈夫。少しずつなら壊してみても、きっと。

夏の終わりかけ、疲れた時に是非読んでいただきたい作品だと思う。