2章 適応障害

 母親の知り合いに医師がおり、その方から教えてもらったクリニックに足を運ぶことになった。とはいえ、精神科や心療内科と聞くと、普通の人はあまり近づきたくない印象を持つのではないだろうか。もちろん私もそうだったし、不安のほうが大きかった。実際にクリニックに到着すると、先代から続く建物らしく、お世辞にもきれいな外観とは言えなかった。ただ、内科もやっているため、風邪の症状などで来院している人も少なくない印象だった。


 ただ、ひたすら話まくる人や、大声で奇声をあげる人などもおり、ここが普通のクリニックではないことは彷彿させる。初診は、時間の枠があるものの予約が必要ないのはよかった。予約制で1週間後では、体が持たない可能性があったからだ。


 予約制ではないため、長い時間待つことになる。特に初診は、話す内容が多くなるので、短時間で終わる内科の診療を優先させている印象だ。


 名前が呼ばれて診察室に入ると、初老の優しそうな先生だったので、少し安心した。ひとつひとつこれまであったことを話したところ、診断は「適応障害」ということであった。正直「うつ病」は聞いたことがあるが、適応障害という意味がよくわからなかった。ネットで調べてたりしているうちに、自分の置かれた環境にうまく適応できず不安感や抑うつ気分、出勤拒否など、様々な症状・問題が出現し、社会生活に支障をきたす状態だということが分かった。


 まさに自分の状態そのものであったことに気づき、さっそく治療を始めることになった。主剤はアモキサンが選択された。古いタイプの薬だが、効果は強いということで、この薬と精神安定剤デパス(エチゾラム)と睡眠薬が処方された。


 まずはこの組み合わせで様子を見ようというのが先生の判断だった。なにも分からない自分は、それに従うことにした。

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