希死念慮に打ち克つ精神科閉鎖病棟入院記

真田タカシ

1章 精神科初診

「もう、無理だ!」

 仕事を投げ出したくなることは、何度もあったけど、本当に投げ出す勇気はなかった。納期に間に合わせる、それは社会人として当たり前のことだと考えていた。実際これまでもそうだったし、これからもそうなるはずだった。


 ただ、体が言うことをきかない。体が疲れているのは間違いない。毎朝栄養ドリンクやビタミン剤を飲み、自分を鼓舞している。しかし、夜は寝付けないし、休日出勤でどこまでが仕事で、どこまでがオフなのかよくわからなくなっていた。


 小さい会社なので、休日出勤ともなると陣中見舞いよろしく、社長が顔を出す。

「これでも飲んで元気を出せ」

 所謂、エナジードリンクをよこすが、そんなものは毎日飲んでいて、その上で仕事をしている。今更効くはずもないと知りつつ、

「ありがとうとございます。これ飲んで頑張ります。」

 と返す。


 そんな激務の最中、朝起きられない日が出てきた。そりゃあ疲れが溜まればそういう日もあるだろう。少しだけ出社を遅らすつもりで、会社に連絡をした。

 しかし、その後も体がいっこうに言うことをきかない。結局その日は有給休暇を取ることにした。


 明らかな体の不調を抱えていたが、会社には出社はしていた。この不調は単なる疲れと考えていたので、当初は内科を受診した。疲れを取るビタミン注射を打ったり、処方された漢方薬を飲んでみたがいっこうに改善しない。


 その後も出社するものの、仕事中に気分が悪くなったり、出社途中で体が出社を拒否しだす。ここまでくると、単なる疲れではすませられないと思い、すがる思いで母親に連絡した。

「知り合いに精神科や心療内科の先生はいない?」

 母の知り合いで一人見つかり、このとき精神科の受診を決意した。

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