【第14話】恋は人の頭をバカにする~悪役令嬢反省会~
乙女ゲームに限ったことではなく、漫画やアニメにも言えることかもしれないが、
しかし、実際の
確かに私は元々彼女に憧れていたし、思い入れは強く強くあったという前提はあるのだけれど、それにしたってこんな風に自分がおかしくなってしまうとは想像もしていなかった。彼女と一緒に居ると、もう他の事なんて何も考えられなくなってしまうのだ。
これはもう私が彼女を攻略しようなんてとんでもない話で、私が彼女に攻略されているとしか言えない状態なのである。
クルーゼ王子にしろ彼の従者のジェイドにしてもそうだ。もともと私が彼らにちょっかいを出して好感度上げをしていたせいもあるのか、最初の印象としてはアリシアに対してあまり良い感情を抱いていない様子だった。しかし、彼女がやってきてから一週間、二週間と過ぎて、私がアリシアにすっかり骨抜きにされてデレデレになっている間に彼女は、私が取り持つというようなこともなしに、二人の男達ともいつの間にかそれなりに仲良くなってしまっていたのだ。
「―――あの娘も慣れない王都での暮らしで不便なこともあるだろう。エリスが力になってやっているようだからそこまで心配はしていないが…」
王子とのお茶会時、彼女の話が出た際にはこんな言葉も飛び出してきた。
一応まだ段階としては"心配"とか"気遣い"の段階ではあるようで、恋愛的な好意までは発展していないようには思うが、王子の心にこうも易々と入り込んでしまうとは、さすがのアリシアである…。
「―――あの時は、誤解から失礼な態度を取ってしまったことを本当に申し訳ないと思っているんです。あの方がエリスレア様に危害を加えるはずなんてないと言うことは、あの方と話しをしていて良くわかりましたから…」
ジェイドはジェイドでこんな懺悔めいたことを私に話してきていた。彼が私に対してLOVEに近い感情を持っていることは変わりないようだが、それはそれとしてアリシアへの信頼度と好感度が上がっているのだろう。アリシアはそんなこと気にしていませんわよと話してやると、わかりやすく安心したような顔をしていた。
ジェイドの自分への上がりすぎた好感度を少しは下げなくては…とは思っていたのだが、このままでは存外簡単にアリシアの方へ彼の中の好感度の天秤が傾いてしまうのでは?という危機感が私の中に浮かんでくる。彼については、いざとなったら私に惚れさせておけば安全だろう…なんて自分の考えがいかに浅はかだったことか…!!
私が一番このゲームやアリシアのことを理解しているつもりで、私はまだ全然彼女のことをわかっていなかったのだ…。
「エリスレア様は、すっかりアリシア様と仲良くなられたのですね」
ジェイドの言葉には少しばかり複雑そうな色が混ざっているように感じたが、それには気がつかないふりでスルーする。
「ええ。とてもいい子ですわ。わたくし、これまで歳の近い友人って言うものも居ませんでしたでしょ?お話をするのも、とても新鮮で楽しくって」
―――まぁ、これまで歳の近い友人がいなかったのは、
そして、その事はジェイドの方も思ったのだろう。少しばかり困ったような控えめな笑みを浮かべて私の方を見ていた。
「…と、とにかく、王子の妃候補の座を競い合う立場とは言え、恨んだり憎んだりする必要なんてありませんもの。あの子と仲良くなれて本当に良かったと思いますわ」
これは特に打算なんてものはなく、心のからの言葉だったのだけれど、少しだけ、彼に対して"私がアリシアをどれだけ好いているか"をアピールしていたような気もする。釘を刺すと言うほどではないけれど…。
ジェイドが私のことを好きなのだとしたら、私がアリシアと仲良くしたいと言う気持ちを無碍には出来ないはずだ。
彼の気持ちを利用することは最初から打算に含んでいたけれど、実際に彼の熱っぽい眼差しや切なげな表情を見てしまってから、さすがに罪悪感を感じるようになってしまってはいるのだけど…。
"アリシアと仲良くなりたい"
だから私は、ここからはその為に更に頑張らなくてはいけないと自身に気合を入れた。
アリシアと会えて仲良くなれたことで散々浮かれていて、気がつけばもう1ヶ月近く経ってしまった。その間にも、アリシアは王子ともジェイドとも仲良くなっているし…。
自分と誰かの好感度の調整なら自分で行えるにしても、アリシアと誰かとの…となれば簡単には行かない。
私がぼさっとしているうちにアリシアが他の誰かと想いを通じ合わせるなんてことになってしまったら。そのせいで、アリシアが私の目の前からいなくなってしまったら…。そんなことを考えたら悔やんでも悔やみきれない。
だから私は、ここからは緩んでデレデレの顔を引き締めて…でも、アリシアとはちゃんとイチャイチャはしつつ!二人一緒に居られる未来を作る為の地盤作りに励む決意を再度固めたのだった。
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