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 疾石臣做とういしおみなが去った後、事件現場にて。

 まだ喰々流惡トくぐりゅうあくとは猫耳フードと対話を続けていた。


「やっといなくなったね、邪魔者。」


「……何だと?」


 邪魔者――――。そう、惡トあくとにとって疾石臣做主人公は邪魔だった。


Q.「ねぇ君たち、何が目的なんだい?ヤンデレくんと人質ちゃん。あとそこのお兄さん」


 惡トあくとはそう言って一人ひとりに指を差す。

 一人は猫耳フード、桃色の髪に口元にはガスマスクを付けている。多分ファッションだと悪トあくとは思っていた。

 二人目は人質の女性。斜めに切り揃えられた前髪で片目が隠れているがかなりの美人だ。

 三人目は連れの男性。銀色の髪は綺麗にセットしてあり、右目にはモノクルを装着している。

 

Q.「どうやら"主人公"が必要みたいだけど。それって彼じゃないとダメなの?」


「……解ってるくせに。」


 人質の女性がボソッと呟く。


「ん?お嬢さん僕の才能ギフト知ってるの?おかしいなあ影緋えいひしか知らないはずなんだけど」

 

 そう言いながら肩のひよこをいじる惡トあくと。ひよこは少しくすぐったさそうだ。


「アンタの才能ギフトは『真相』でしょ」


 女性はさも当たり前だというように、首にかけた鍵の付いたネックレスを握りながら才能ギフトを口にする。


「ご名答。君も名探偵かい?」


「普通の探偵は自分のこと名探偵って言わないわよ」


 凄く大きめのため息を吐いて女性は言う。


しのぶ、もういい。作戦は失敗よ」


「そうっすか……残念」


 猫耳パーカーもとい念呪忍ねんずしのぶは女性を手から離し、ナイフをポケットに仕舞った。


「まさか失敗なんてパターンがあるなんて思わなかったよ」


「イレギュラー中のイレギュラー来ちゃったね」


「いっちばん来て欲しく無かったわ」


「?」


 惡トあくとは三人の会話を不思議そうな顔で聞いている。それを横目に三人は諦めたように話す。


「……念呪忍ねんずしのぶだ。そこの二人は兎も角俺の事は知らないだろ」


「んん~?」


「何がおかしいのよ」


 不思議そうな顔を一向に止めようとしない惡トあくと。それもそうだ。


「僕達初対面だよね?」


「……は?」


 惡トあくとに対して少し驚いたような声を上げたのは女性の連れの男性だ。


「……アンタ名前は?」


喰々流惡トくぐりゅうあくと。名探偵」


「……あっそ」


 不満げな声で返す女性。


「アンタに用はないから帰りなさい。そして二度と顔を見せないで」


「ええ……」


「まぁまぁ、そんなに落ち込むなよ鞘架さやか


 女性……鞘架さやかを宥めながら男性は言った。


「私は浮絵刀架うきえとうか。彼女、浮絵鞘架うきえさやかとは親戚みたいなものだ」


「別に落ち込んでないっっっっ!!!!!」


 鞘架さやかが叫ぶ。顔が真っ赤だ。


「お?」


 すると惡トあくとが閃いたように言った。


「さやちゃん、僕の事好きなの?」


「えっえっ」


 鞘架さやかの頭から煙が出ている。


「図星?モテる男は辛いなぁ」


「消えなさい」


「やだ」


「消えろ」


「やーだねっ」


 周りの事が見えていないかのように会話を続ける二人。その様子はまるで旧知の仲……それもかなりの仲良しのように見える。


惡トあくと、そこまでにしようか」


 刀架とうかが制する。何だか慣れた様子だ。


「おいおい俺達は無視か?ラブラブじゃねぇか」


「君……。」


「何だよ」


「ちっちゃいね。」


 何かが切れるような音が聞こえたような気がした。


「誰がチビだって?」


しのぶくんだけど。君さやちゃんより小さくない?」


「さやちゃんって呼ぶな!」


「落ち着いて……」


 場は混沌を極めていた。一人は煽る、一人は煙を上げる、一人はガチギレする。

 平常心を保っているのは刀架とうかくらいだ。


「あ、さやちゃん連絡先交換しようよ今度薔薇の花束贈ってあげる」


「……。」


鞘架さやかが気絶してる……」


「おいだから俺を無視すんじゃねー!」


「あ、ちなみにね疾石臣做とういしおみなは止めといた方がいいよ。君には僕が居るだろ?」


「――――」


鞘架さやかが倒れた……」


「だから俺を無視すんな!!!!」


 この場が収まるまで一時間程かかったらしい。

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