第10話 四重② ~二口女~

「ン……」

 ミナミが声を漏らす。手はそのまま降りていき、スキニーパンツの留具を外し、ジッパーを下ろした。彼女の前にひざまずき、そのままゆっくりと脱がせる。まばゆいような白い足が露出していった。

 ニットは着せたまま、スキニーパンツとピンクのレースが付いたパンティを脱がせると、太ももから足の付根、そしてアソコまでゆっくりと唇を這わす。甘い香り、そして興奮している女のニオイがチン之助の鼻をくすぐる。

 様子見のクンニでミナミの弱い部分を探った。恥丘、大陰唇、小陰唇、膣口、クリトリス。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ん、あン……」

 甘い声が漏れる。ミナミは立ったまま、後ろ手で長机のヘリをつかんでいる。

 初診を終えたチン之助は本気のクンニに移行する。

「ちょっ、急に激しく、あン、あ、あ、ボクそこ弱いの。なんですぐ分かっちゃうの……ンン!」

 ミナミは腰を突き出し、膝をガクガクさせて達した。

 無呼吸でクンニをしていたチン之助は立ち上がり、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。その顔は愛液でベタベタだ。

 手で顔を拭い、チン之助は言った。

「なるほどね。君は大学に入ったものの、元来の内気な性格で自信が持てず、仲間の輪に入って行けない。そんな自分を変えようと、アヤカシ屋で働いているわけだ」

「ど、どうしてそれを」

「男たるもの、本気のクンニをすれば相手の気持はだいたい分かる。……君は、孤独だったんだな。サイカちゃんも、アヤカシ屋のみんなもいる。でも、人間は君を受け入れない。人間だらけの社会にあえて身を置く君は、そう思って生きてきた」

「そう、そうなんだよ」

 後ろの口のサイカが言った。

「昔からミナミは人間に興味津々だった。嬢と客の付き合い以外で人間なんか関わってもしょうがねえって言ったんだけど、もっと色んな人と話したいって大学入って」

「でも、友達は出来なかった。ボクがつまらない女だから。」

 冷めた声でミナミは言った。

「友だちになりたいって言う男の人もいたけど、ちょっと一緒にいただけでみんなどっかいっちゃった。ボクはもっともっと一緒にいたかったのに」

「その男たちは、見る目がないな。君はこんなに素敵な女の子なのに」

「本当? チン之助さん?」

「ああ」

「ボク、うれしい」

 ミナミは飛びつくようにチン之助に抱きついた。思わぬ勢いにチン之助は数歩下がる。

 彼は、もっと注意を払うべきだった。一心同体でミナミを気遣うサイカや、家族同然のキキョウがいながらミナミが自信を持てなかったわけを。彼女が人間に、何を求めているのかを。

 ズムッ。

 強烈な違和感がチン之助の肛門を襲う。

「ぐぅ」

 エネマグラだ!ミナミが袖に隠し持っていた性具を、トランクスをまくってチン之助の菊の門に挿入したのだ。

油断した。チン之助は思った。階段にあった大量のアダルトグッズ。あれは当然四階で使うことを想定して置かれているものであった。だが、道具を使うのであれば、自分が道具を使われることも、考えに入れておくべきだったのだ。

 二口女は目を白黒させるチン之助に体重をかけ、講堂の椅子に無理やり座らせた。

「かはっ」

 エネマグラの丸まった先端が直腸に分け入り、衝撃に空気が口から漏れる。

「ミナミ、なぜ……」

「せっかく出来た男の友達は、みんなボクとエッチしたがるのに、いざエッチするとすぐ無口になってボクのことほったらかしにしちゃうんだ。ボクに……ボクに魅力がないから!」

「違うぜミナミ」

 サイカが言う。

「いつも言ってるだろ。お前はやりすぎちまってるんだ。一晩に何回も出来る男はまれだ。お前とのエッチが激しすぎて、相手が廃人になっちまってるんだよ」

 ミナミはチン之助のトランクスから衝撃でぐったりしたペニスを取り出すと、唾液を垂らし、慣れた手付きでしごき始めた。

「ありがとうサイカちゃん。いつもそうやってボクを元気づけてくれて。でも、分かってるんだ。ボクに魅力がないから男の子たちのおちんちんはすぐに元気がなくなっちゃうんだ。ボクに自信がないからキラキラした女の子たちはボクと遊びにいってくれない。全部、ボクが悪いんだ」

 なるほど、分かってきたぞ。肛門の衝撃とペニスへの刺激からなるべく意識を切り離しながらチン之助は思った。

 今までに会ってきた妖怪娘たちとは違い、ミナミは人間が好きなようだ。人見知りでありながら、人間たちの輪に入りたいと思っている。顔がよく抜群のプロポーションを持つ女だ。口が二つあろうが言い寄る男は後をたたないだろう。

 問題はその後だ。彼女は死亡お遊戯で四階を守るほどに高いセックス能力を持つ、剛の者。その辺の大学生じゃ仮に数人がかりでも相手にならない。

 ミナミを満足させる前に廃人になった男を見て、彼女は「自分に魅力がないから、男が途中でセックスをやめてしまった」と思い込む。自信が持てないミナミは女性の友人を作ることも出来ず、その鬱憤は彼女にモーションをかける男性に向かう。

 まさに負の連鎖だ。そのループを断ち切るためには……

 二口女はニットのセーターを首元までまくり上げ、ピンクのブラジャーとその悩ましい谷間を露出させた。

 両手を背中に回すとホックを外し、淫靡な動きでブラを脱ぎ去る。

 考えなくては、ループを……

 解き放たれた双丘とその先のピンクの乳首は世界で一番美しいものに見える。

 ミナミがその両胸でチン之助の固くなったペニスを包む。両側から乳を押さえつけ、もったりとした優しい刺激。メスがオスに奉仕する暴力的なまでの視覚の刺激。肛門を中心に寄せては返す違和感の波が、チン之助の頭を悪くしていく。

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