第8話 友人Pは思考回路が何かに毒されているようです……。
添い寝だ、会議だと大騒ぎで、結局、ほとんど俺は眠れず仕舞い。
眠い目を擦りながら登校すれば、自分の席に着くや否や、友達の一人が俺の前の席にドカリと勝手に座り、なぜか晴れ晴れとした表情を俺に見せつけてきた。
ちなみに、エリカとは同学年だが、同じクラスではない。
「よぉ、幸村。えらくツラそうじゃねーか。お前が調子悪そうだと胸がスカッとするから不思議だよな〜」
たぶんコイツ(取り敢えず友人Pとしておこう)は自らが求めて止まない『義理姉妹の夢』を叶えている俺が憎くってしょうがないんだろう。
なら話し掛けてこなければいいのに、と思うが、毎日俺に話し掛けてくるところを見るに、別に俺のことが嫌いって訳でもないみたいだ。
「俺の不幸を喜ぶなよ。そんなんだから、いつまで経っても夢が叶わないんだぞ?」
「良い子にしてたら夢が叶うのかよ? 叶わねーって。夢ってのはなぁ……自分で叶えるもんだ。……なぁ、そうだろ?」
まぁ、たしかに清廉潔白な良い子でいたとしても、クリスマスにサンタさんが義理の姉妹をプレゼントしてくれる訳でもない。
だからと言って、コイツの夢は自力で叶えられるもんでもない。悲しい話だ。
「盛大にカッコつけてるところ悪いけど、ホームルームまで寝かせてくれ。寝不足なんだ」
友人Pの話に付き合っていても大した益もない。そんなことより寝不足の解消だ。
そう思い、俺は机に突っ伏したのだが、どうにもコイツの話はまだ終わらない様子。
「なんだよ。ただの寝不足かよ。あっ、あれだろ? 画像のフォルダー分けしてて寝れなくなったんだろ? 分かるわ〜。これはお姉さんフォルダーに入れるべきか? それとも乳フォルダーか? とか悩むよな! で、気が付いたら朝になってんの!」
おそらくコイツが言っているのは、二次元画像のことだろう。
残念なことに、コイツは二次元に半分ほど頭をヤラれているのだ……。
「お前と一緒にすんなよ。俺は昨日エリカたちが……」
そこまで口にして言葉を切る。よく考えずとも、コイツに「三姉妹が添い寝してきて全然寝れなかった」なんて言えば、烈火の如く怒るに決まっている……。
「おい、何だよ? エリカちゃんがどうしたって? おい、コラ。まさかエリカちゃんと
さっそく頭に怒りの炎が着火しかけていやがる……。
(相手にするのも疲れるし、取り敢えず寝たフリでもしてみるか)
「……すぴー。もう食べられねぇよ。……むにゃむにゃ」
「おい! 寝たフリしてんじゃねーぞ、この大根役者が」
「ヒナ式寝たフリだったんだが、やっぱりバレバレだよな……」
「当たり前だろ。ていうか、今お前『エリカたち』って言ったよな? まさか、お前……ヒナカちゃんやアヤカちゃんまで毒牙に……」
ちなみに、コイツはウチの三姉妹のことを勝手に「ちゃん付け」で呼んでいるが、コイツとウチの姉妹たちには、ほとんど面識がない。
なんならコイツは同学年のエリカにすらマトモに認識されていない。切ない話だ。
「安心しろ。お前じゃあるまいし、そんなことしないから。……昨日ゲームに強制参加させられて寝れなかったってだけだよ」
いかにもありそうな嘘で話を繕ってみたが、友人Pの場合、俺が義理の姉妹と一緒に遊んだってだけでもキレそうだ。
「テメー! まさか、ゲームって、王様ゲームじゃねーだろーな!? それとも、ツイスターゲーム……っ!?」
(……中々、気持ち悪い思考回路してんなぁ)
「どこの世界に家族で王様ゲームする奴がいるんだよ……」
「もし俺がお前の立場ならするね。毎晩毎晩、欠かさずにするねっ! あ〜、でも、エリカちゃんたちは、きっと奥手だから恥ずかしがっちゃうか〜っ?」
(エリカたちが奥手……ねぇ……)
「だかしかし! この俺様が恥ずかしがるエリカちゃんたちを……。げへ……げへへ……」
(コイツ、
「……お前って普通に気持ち悪い奴だよな」
「なにを朝っぱらから気色の悪い会話をしているんですか?」
ついに俺の口から本心がダダ漏れしたところで隣席の女子にそう話し掛けられた。
*********************
次回、王様ゲーム
次回はキチンとラブコメします!
——九夏なごむ
*********************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます