第10話 『死が伝染する人魚の呪い』

          10.死が伝染する人魚の呪い


 二日目。朝の八時丁度。


 池間漁港組合の人達の協力を受けダイバーが海中へと潜り、昨日の二十一時三十分くらいに死伝の雷魚の策略で夜の海に落ちて行方不明になっていた高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の溺死体を発見する。だがその近くの海の底で見つかったのはそのふたりだけではなかった。

 なんと信じられないことにその直ぐ近くの海に沈んでいたのは衆議院の政治家で有名な、沖縄に選挙区を持つ金丸重雄だった。


 金丸重雄は昨日一晩の内にペンション内の自室から突如としていなくなり、いつの間にか高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長が落ちたほぼ同じ場所の崖から落ちて溺死をしていたのだ。


 いつペンションを出たのかも当然分からず、だれにもその姿を見られることなく一体どうやって、どんな方法で道路を移動し、フナクスビーチ側の海岸まで辿り着いたのかは全くの謎だが、管理人の岩材哲夫の話によると表玄関から靴を履いて外へと出た形跡は全くないとのことなので、当然外履きの靴は靴入れの中に入ったままだ。


 どうやら赤城文子刑事の話では海で溺死した金丸重雄の死体の足首にも靴は履いてはおらず、その周辺の海の底をダイバーに頼んで探して貰ったとの事だが、それらしき物は何一つとして転がってはいなかったとの事だ。


 と言うことはやはり金丸重雄は誰かの手により理不尽にも運ばれ、その後は他の犠牲者達と同じように不条理にも海に落とされ殺害された物と思われる。だがそう考えると不可解な事がいろいろと出て来てしまう、勘太郎はこれまでに起きているフナクスビーチでの事件を一つ一つ確認する為、海から引き上げた、高峰やすし工場長・菊川楓宣伝部長・そして政治家の金丸重雄の死体についての情報を赤城文子刑事に求める。


 赤城文子刑事はフナクスビーチ側の崖がある海岸まで来た黒鉄勘太郎と白い羊のマスクを深々と被る羊野瞑子の前まで来ると、これまでにわかった事を説明する。


「初めに、今日の朝に海から引き上げられた高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の話について説明するわね。死亡推定時刻は昨日の夜の二十一時から二十二時くらい……私達がいる前で崖から落ちて暗い海底へと消えた時刻と同じでしょうから正確な死亡推定時刻は二十一時三十分と言った所かしら。その死因は二人とも当然溺死で大量の海水が胃の中から共に見つかったわ」


「それで、他に何か変わったことはなかったですか。あの狂人・死伝の雷魚は被害者の体に全く触れる事なく二人を海へと半ば強制的に誘い、そしてそのまま落とす事ができていました。でもそのカラクリは一体どんな物で、どんな方法で人を崖から海へと落とす事ができているのか……その不可思議な謎は二人の男女の死体を徹底的に調べ上げたら証拠は必ず残っているはずです。そこの所はどうなんですか」


「確かに痕跡は残ってはいたわ。崖から海に落ちる途中でついたと思われる腕や足についた擦り傷や爪で引っかいた土の跡がね。でもその落ちる瞬間は昨日の夜にこのフナクスビーチ側の海岸にいた私達はよーく見ているはずよ」


「昨日の夜は周りが暗くてその落ちる瞬間は、俺は見てはいませんでしたけどね。懐中電灯を照らした暗闇から聞こえてきたのは人の悲鳴と何かが擦れて崖の方へと強制的に移動する被害者が地面を這う音だけです。なのでその時についた擦り傷や土爪の後でしょうね」


「あと……何か強い力で胴回りを圧迫された形跡があったわ。高峰やすし工場長の方はつけてあるベルトを何かで強く引っ張られたのか腰のベルトは大きくゆがみ、菊川楓宣伝部長の方は腰に下げていたポシェットの紐が腰のあたりできつく結ばれているのが発見されたわ」


「つまり、昨日の夜の二十一時三十分くらいに高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長が何か見えない力で崖の方へと引きずられて行くのを我々は目撃し、見てしまったと言うことですね。そしてその謎の正体はやはり……細くて丈夫なカーボン繊維でできた(マグロを釣るような)太い釣り糸か、ビアノ線のような細く丈夫な線で無理やりに体を引っ張られたかも知れないと言うことでしょうか。でもそんな二人は一体どんな力で暗闇が広がる海に突き落とされたのですか。その力の仕組みと動力は一体なんですか?」


「それがなにも見つからなかったのよ。私はてっきり五百キロを越える砂袋か岩や石でも崖の上から落とされて。その紐と繋がっていた高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人がその重みに耐えかねてズルズルと引きずられるようにして崖から落ちて海の底へと消えたと考えていたわ。でも……」


「でも二人が落ちた海の底には砂袋も、ましてや岩や石といった大きな物は何一つとして沈んではいなかった。そして当初は釣り糸やビアノ線のような物を使ったトリックだとばかり思っていたのですが、細い糸のような物やピアノ線のような物は海では全く見つかってはいないということです」


「証拠となるはずの釣り糸のような物や海底に沈んでいるはずの重りになる物がどこにも見つからなかったと言うことは、やはり私達が知らない何らかの別の方法がもしかしたらまだ隠されているかも知れないと言うことよ。、まだ誰にも知られてすらいない不可思議な謎がね」


「まだ見ぬ別の方法、そして不可思議な謎ですか。でも重石を動力に使ったトリック以外で高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人を海へと引きずり落とすことは果たして可能なのでしょうか? 今の段階で思いつくシンプルな方法はそれくらいしか思いつかないのですが」


「両手を後ろ手に縛られていたのは腰のベルトにくくり付けられていたと思われる細い線のような紐を、体が海へと引きずられている最中に勢いで外されたら流石に不味いと思ったからかしら」


「恐らくはそうでしょうね。引きずられている途中でワイヤーが外れたり、もしくは切れたりしたらその時点でトリックの正体がわかってしまいますからね。あれは薄暗い夜に相手に考える暇を与えないくらいに素早くやるからこそ効果があるんですよ。そうでなかったらばれてしまいますからね」


 そんな勘太郎が話す高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人が見えざる謎の力で半ば強制的に海へとたたき落とされてしまった疑問に、話を後ろで聞いていた羊野瞑子が燦々と照りつける日の光を気にしながら冷静に答える。


「証拠が残らない重りと言ったらやはり普通に考えて冷凍庫から切り出された氷を使ったトリックだとも考えられます。人をその重みで海中に引きずり落とせるくらいの重い重量の氷ならこの夏の暑さと海の波の力で一晩あれば簡単に氷は溶けてしまいますし、何より重りとなる物が海中で消えてしまいますからね」


「なるほど、氷ね、確かに人の体重の二倍となる大きな氷を使えば重しの代わりにはなるけど、なんでお前はそれが氷だと思うんだよ」


「音です」


「音だと」


「わたしも昨日の夜はこのフナクスビーチの現場にいましたから高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人が崖から海に落ちる瞬間をこの耳で聞きました。そしてその一~二秒前に何か大きな物が海へと落ちる音も当然ハッキリと聞いています。そしてその物体が氷だった事にも朝の現場を見て直ぐに分かりました。その後、一時間後には漁港組合側から船を出して貰って死体の捜索をして貰っていた訳ですから、死伝の雷魚としては一刻も早く証拠となる物を回収しなくてはいけなかったと思います」


「まあ、そうなるよな」


「そしてその手間を減らす為に使われた氷は三十分もあれば強い波と夏の夜の陽気の暑さで熱せられて氷が溶けて割れて小さくなり、勝手に氷のかけらとなって散らばり海の四方へと流れていきますから、証拠は何も残らない物と思われます」


「なら被害者とその重しとなる氷とを繋ぐ紐が一体どこに消えたのかという説明はできているのか」


「その氷と被害者とをつないでいた細いワイヤーは死伝の雷魚が海に飛び込んだ際に、もう既に海で溺死をしている二人に近づき、腰のベルトや腰の紐にくくりつけているワイヤーを切断し、そのままワイヤーを手で引きずりながらある水中用の機械にでもくくりつけてそのまま移動をしながら回収をしたのではないでしょうか。私達狂人が被るこのマスクはいずれも暗視装置内蔵型ですから夜間でも目は利きますし、死伝の雷魚が被る魚人のマスクは当然水中用ですから夜の海での泳ぎも当然対応ができています。なのでそのワイヤーの回収は容易にできると思われます」


「そうか、水中用の機械にワイヤーをくくりつけたのか。で、その水中用の機械とは一体なんだ?」


 そんな勘太郎の呟きを無視しながら羊野瞑子の仮説は尚も続く。


「仮にその氷にワイヤーをくくりつけたままだったとしてもその氷が砕けてワイヤーが海の沖の方へと流された時点で漁師達がその細いワイヤーを探し当てる事はまずできないと思われます。まあ彼らが捜索しているのは細いワイヤーではなく行方不明の水死体ですから、当然証拠となる物は探すことすらしないでしょうけどね」


「羊野、お前は昨日の夜、何か大きな物が海へと落ちる音を聞いていたからこそ疑問に思っていたんだな。そして今日の朝にその重しとなる物が海底になかったからこそ、その重しは氷だと思ったんだな。なるほどそれなら納得がいくぜ。だがだ、もしもおまえの言うように死伝の雷魚本人があのペンション内にいる中の一人だというのなら、海に飛び込んだ犯人は一体どうやって俺たちよりも早く移動をする事ができたんだ。どの海岸から陸に上がったかは知らないが普通に泳いでいたら俺たちよりも早くあのペンションに戻ることはまずできないだろ!」


「ええ、だからこその私達の移動を遅らせる為の足止めであり、そしてパンク騒動なのですよ。死伝の雷魚と私達がにらみ合っている隙に犯人側の協力者が赤城文子刑事が運転するレンタカーの前まで来てパンクをさせて帰って行ったのではないでしょうか。ペンション内に来ていた沼川英二巡査を眠らせたのもペンション内にある車を半分ほどパンクさせたのも死伝の雷魚がペンション内に逃げ帰る時間を作る為だと思われます」


「なるほど、昨夜のパンク騒動にはそんな裏があったのか。確かにあのパンクのおかげで俺達がペンションに戻る時間がかなり遅くなったからな。その間に俺達に何かを伝えようとしていた流山改造さんが未だに行方不明のままだし、高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人が死体となって見つかったその同じ場所で、今度は政治家の金丸重雄さんがなぜか海で死体となって発見されている。だからほんと、もう訳が分からないよ!」


「フフフフ、その移動方法には恐らくは死伝の雷魚が足につけていた水かきのジェットフィンを使用していた物と思われます。昨日の夜に彼の姿を見た時に最初からフィンを履いていましたからね。そして更には予め海底に用意をしておいた水中用のスクーターで高速移動をして海中を移動したのではないでしょうか。その証拠に池間灯台側の海岸付近からまだ使える水中スクーターが発見されましたからね。恐らくはそこから陸に上がってその場に止めてある車か何かで移動をしてペンションに戻ったのだと推察されます」


「なるほどな、水中用の機械とは水中スクーターの事だったのか。でもそんな代物が灯台のある海岸付近に投げ捨てていたのなら、その池間灯台側から陸に上がったのかも知れないな。でも死伝の雷魚はなんでそんな重要な証拠になる物をわざわざ残して池間灯台側にある海岸を後にしたんだ。そんな所に水中スクーターを置いていったらそこから移動方法がばれてしまうと言うのに?」


「さあ、なぜでしょうね。なにか水中スクーターを置いていかなくてはならない予期せぬトラブルにでも遭遇してしまったのでしょうか?」


「トラブル……そうか、現在行方不明になっている流山改造さんはもしかしたらその時間に自転車で夜の散歩をしていて、その時にでもたまたま池間灯台側を通りかかった時に海から陸に上がってくる死伝の雷魚の姿を目撃したんじゃないだろうか。そしてその海岸に隠すように止まっているその車や正体を見てしまったのかも知れない。だからこそ流山改造は自転車で猛スピードでペンションへと戻り、その流山改造さんの目撃に気づいた死伝の雷魚が物凄く焦ってペンションに戻ったから水中用のスクーターを忘れていったんだよ。きっとそうだよ。流山改造さんは俺達にその事を言おうかどうかを迷っていたはずだが、犯人に気づかれているとは知らない流山改造さんは死伝の雷魚の魔手に落ちてしまったんじゃないだろうか。そうとしか考えられないぜ!」


「もしもその仮説の通りならもう既に流山改造さんは口封じの為に殺されているかも知れませんね。未だに行方不明と言うことはつまりはそういうことです。流山改造さんはなにか犯人に繋がる証拠を見てしまったからこそ、その事に気づいた犯人に捕まりそして消されてしまったんですよ」


「ま、まだ死んだと決まった訳じゃないだろ。とにかくだ、これから俺達も直ぐに漁港に行って三人の死体を保管してある建屋に向かうぞ。赤城先輩が持ってきてくれた情報とスマホの画像だけではイマイチ分からないからな」


「私はもう既に漁港に行って彼らの死体を見てきましたから再び行く必要はないですよ。黒鉄さん一人で漁港まで行って来てください」


「お前はいつ一人でいったんだよ。俺に黙って勝手に行動をしやがって、許さん、罰としてまたお前には付き合ってもらうからな。そんな訳でとにかく行くぞ。そこで高峰やすし工場長と菊川楓宣伝部長の二人の死体を一通り調べたら次は政治家の金丸重雄さんの死体を調べるぞ。それが終わったら流山改造さんの捜索だ」


「相変わらず人使いが荒いですね、黒鉄さんは」


「それで、金丸重雄の死体もやはり溺死か」


「はい、海での溺死のようです。でもこのフナクスビーチ側の海岸にどうやって移動をして来たのかが未だに謎です。昨夜にペンションに帰ってからは私はパンクをさせられていた車を調べていましたし、黒鉄さんはアリバイの聞き込みをペンション内にいる人達にしていましたし、赤城文子刑事と部屋で熟睡をしている所をたたき起こされた沼川英二巡査はその後は外に出て漁船に乗り込んで海に落ちた人達の捜索をしていましたからね。そしてその後は夜の二時から朝の六時まで不眠不休で私は池間灯台側を、黒鉄さんは池間大橋側の道路を見張っていましたから、金丸重雄さんを乗せた車は一台も走ってはいなかった事はもう既に確認済みです」


「まあ今は池間島事態の渡航を控えていて車も数える程しか走ってはいないだろうから、その車の持ち主を確認することも容易いだろうけどな。そして案の定俺たちがいた主要の道路に金丸重雄さんを乗せた車は一台も通らなかった」


「ええ、そういうことになりますね」


「俺たちは各主要の道路を通過した車のナンバープレートを写メに撮って警察に届けていたからな。その車の持ち主も自ずとわかると言う物だろうぜ」


「でも恐らく死伝の雷魚は金丸重雄さんを車では運んではいないような気がします。まだ私達の知らない何か別の方法でフナクスビーチ側の海岸まで運んだような気がします」


「それでその海で溺死体となって見つかった政治家の金丸重雄さんの死亡推定時刻はどのくらいなんだ」


「金丸重雄さんの死亡推定時刻は深夜の午前の三時から五時の二時間の間だという話です」


「午前の三時から五時くらいだと、その時間まで金丸重雄さんは生きていたと言うのか」


「はい、それは間違いないようです。金丸重雄さんの死因は間違いなくこの海に落ちての溺死みたいですからね」


「俺達がいたフナクスビーチ側の海岸に繋がる道路は全て塞いであったんだからそんな怪しげな車は一台も通ってはいない事は確認済みだよな。もしかして俺たちの知らないフナクスビーチ側の海岸に繋がる地元民しか知らない抜け道でもあったのかな?」


「たとえ抜け道があったとしても、直ぐに海での捜索を地元の漁師達に頼んで船を降りてきた赤城文子刑事と沼川英二巡査が協力をしてその抜け道のような所も巡回して見回っていたみたいですから、彼らに遭遇するかも知れないリスクを負ってまで車でフナクスビーチ側の海岸に向かったとは考えにくいと思いますよ」


「とは言ってもやはりフナクスビーチ側の海岸まではどうしてもその移動手段は車を使わないと現場にはいけないだろ。まだ生きている金丸重雄さんを一体どうやって運んだのかは知らないが、あの夜は事情聴取が終わった後に金丸重雄さんは一人でゆっくりとお酒を飲むために部屋に閉じ隠って管理人の岩材哲夫さんに追加のビールを注文していたのを覚えている。だからかなり酔ってはいたはずだ。そこに犯人が金丸重雄さんの部屋を訪れて鍵を開けさせてからそのまま拉致したんだろうぜ。管理人の岩材哲夫さんが何回もペンション内を巡回していたにも関わらず、その網の目のような時間をかいくぐって犯人は金丸重雄さんの部屋を訪れて、そのまま外へと連れ出しているんだから、岩材哲夫さんの巡回にはかなりの注意を払って外へと出た事が伺え知れるな。しかも酔い潰れていたのか気絶をしていたのかは知らないが犯人はそんな状態の金丸重雄さんを運んで海岸まで移動をしているんだから必ず二人以上は仲間がいるはずだ。でないと意識のない金丸重雄さんを一人で部屋から運び出す事なんてまずできないだろうからな」


「二人は確実にいるでしょうね。でも今の段階ではまだ犯人は分かりませんけどね」


「あと移動のルートだが、もしかしたらこのペンションの隣にある池間湿原の水用地に小型の船でも浮かべてフナクスビーチ側まで渡ったんじゃないのか。水の上を渡ったんなら道路は関係なくなるし、ゴムボートを使えば空気を抜けばそのままゴムボートは回収もできるからな」


 その勘太郎の仮説に羊野は否定の声を漏らす。


「いいえ、それはあり得ませんね。わたしもそう思って谷カツオさんから借りたデジタルビデオで約八時間ほど池間湿原を流れる水辺の通り道に設置をして自動のオート機能で撮影をしていたのですが、特に船のような物が通った映像を見つける事はできませんでした」


「そうか、ゴムボートは池間湿原の水の上を通ってはいなかったのか。中々の着眼点だと思ったんだけどな。そうか羊野も早い段階でその可能性に気づいて、池間湿原の水辺に昨日の深夜からデジタルビデオを仕込んでいたのか」


「まあ私が池間湿原にデジタルビデオを仕掛けた理由は今現在行方不明になっている流山改造さんを海まで運ぶ為に必ず犯人は池間湿原の上を船で通ると思っていましたから、その経路を確認する為に敢えて仕掛けた物ですわ。でもまさか金丸重雄さんがその朝に海で亡くなっているだなんて流石に予想外でしたけどね」


 そんな事をつぶやきながら勘太郎と羊野は午前中はフナクスビーチ側の海岸で赤城文子刑事がスマホで写真を撮ってきたという死体の画像を見ながら今までに分かった死亡推定時刻や死体を調べた結果の報告を聞いたり、その考えられる仮説を皆で述べ合ったり、池間漁港に再び出向いて溺死した三人の水死体を調べたりと色々と忙しく動き回っていたが、午後の時間に勘太郎達はペンション内にいた岩材哲夫から急ぎの連絡を受ける。


 かなり焦った感じで意気消沈で言う岩材哲夫の話によるとペンション内で人がまた一人亡くなったとの事だ。


 その人物とは友人の日野冴子が事故死の形で死亡し、その影響で今は別の空き部屋へと移動となり部屋を変えた人気ユーチューバーの大学生、池口琴子だった。


 そうこの一日の間に連続して今度は池口琴子がその命を落とし、そして亡くなったのだ。


 そして報告を聞いた勘太郎はその後、急ぎペンションに戻った事は言うまでもない。

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